タイガー魔法瓶が今年1月に発売した「真空断熱炭酸ボトル」。当初の1年間で目標としていた10万本をわずか3か月で超え、半年間で16万本を売り上げる大ヒット商品となっている。炭酸飲料を持ち運びできる真空断熱ボトルで、保冷とともに炭酸の強度を長時間保つことができる。いままで“ありそうでなかった”ヒット商品開発までの裏側を取材した。
■開発のヒントは…「炊飯器」と「ペットボトル」?

当初の売り上げ目標は1年で10万本だったが、わずか3か月で目標をクリアした。量販店では1つ5千円以上するが、発売開始半年で16万本の大ヒットとなった。これまで、ボトルを開ける際の安全面の確保などからタブーとされてきたことを覆し、炭酸飲料を詰めて持ち運べるようにしたことで大ヒットしているのだ。開発には約2年かかったという。前提には老舗メーカーならではの安全性確保の高い基準があった。何が難しかったのか。

タイガー魔法瓶 商品企画第1チーム 南村紀史マネージャー
「炭酸飲料の圧力が想定以上に高かったので、安全弁の構築に時間を要しました。例えば真夏の車中に真空断熱炭酸ボトルを入れて置き忘れてしまった場合、1日ぐらいであればそこまで温度は上がらないのですが、2日目、3日目はかなり温度が上がってしまうのです。温度が上がると水の中に炭酸ガスが溶け込めないので、出ていく一方になる。そんな万が一の時に栓が飛ぶ恐れがあるというところで、その万が一をどこまで想定するのかと」

基準のクリアに大きく貢献したのが、圧力ジャー炊飯器の安全弁構造だ。炊飯器をヒントに、炭酸ガスの圧力が高まるとガスが抜ける仕組みにした。さらにヒントとなったのが…ペットボトルだ。

タイガー魔法瓶 南村紀史マネージャー
「炭酸飲料のペットボトルもネジの部分に縦に溝が切られており、そこから圧力が抜けるような構造になっています。開けていく過程でガスを抜くというところは、炭酸飲料対応の上では必要な事項だと考えています」

保冷力を高めるために、中のステンレス表面に独自の研磨技術「スーパークリーンプラス」加工を施し、真空二重構造の間に銅箔を巻いた。
■コロナ禍の猛暑で売り上げ伸ばす 光る日本の技術

コロナ禍の猛暑の中、「真空断熱炭酸ボトル」の人気は勢いを増している。2022年上半期の大ヒット商品を生んだ背景のひとつに、炭酸水の売り上げ増がある。無糖炭酸水の生産量はこの10年で4倍以上の伸びとなっている。さらに、SDGsの広がりで日本でも多くの人がマイボトルを持つようになったこともヒットを後押ししている。
日本のステンレスボトルは世界的にも人気で、コロナ前は海外からの観光客がたくさん買って帰っていた。この分野でも日本の技術が光っている。
(BS-TBS『Bizスクエア』 8月13日放送より)