鹿児島市の路面電車。ベビーカーを連れて乗車した人の中には、ヒヤッとする経験をした人も多くいるようです。子育て中のお母さんと一緒に乗って検証してみました。
先月、県外から鹿児島市に転入してきた子育て中の女性が、先輩ママに悩みを相談するイベントが開かれました。その中で話題になったのが…。
「ベビーカーを乗せられる市電が少ない」
「道歩いていて市電のレールにはまりません?」
「結構狭いから乗るのも気が引けるな」
市電を利用する時の困りごとです。実際にどんなことに困っているのか?こちらの親子に同行させてもらいました。
去年7月に夫の転勤で東京から来た綿谷美帆さんと、1歳4か月の息子・壮輝君です。綿谷さんは今、妊娠6か月で、この日は神奈川から旅行に来ている夫の両親に会うため、最寄りの南鹿児島駅前電停から武之橋まで乗車します。

綿谷さんが市電に乗る時に気をつけているのが、レールの溝です。

(綿谷さん)「乗るまでに線路があるので、ベビーカーですっといけないということがある。(電車も)間隔短く来るので、急いで渡らないとと、ドキドキしながら」
ベビーカーを押しながら、レールが通る横断歩道を足早にわたります。朽ちた舗装とレールの隙間に車輪がはまってしまいました。

この時の壮輝くんの様子を見ると…小さな隙間に見えますが、ベビーカーには大きな衝撃が伝わっていました。
こうした老朽化した舗装やレールの溝について、市電を運行する鹿児島市交通局にきいてみると…。
(鹿児島市交通局・電車事業課 末吉健治課長)「30年以上経過し、舗装が割れてでこぼこのところがある。ベビーカーやシルバーカーなどが渡り切れず、事故につながると危惧」
交通量の多い電停などでは改修済みですが、市電の軌道は全長13キロあるため、今後も老朽化の程度を見て補修を続けるとしています。
市交通局がベビーカーを利用する人にすすめているのが、「超低床電車」と呼ばれる車両です。

2001年から導入され、停留所との段差が5センチとほかの車両と比べ低く、車内に段差もないため、ベビーカーをたたまずに乗せることができ、ベビーカーが固定しやすいスペースもあります。
超低床電車に乗るのは初めてという綿谷さん。しかし…来たのは一般車両。鹿児島市電の超低床車両は現在、55両中17両のみ。4本に1回ほどの頻度で運行されています。実は時刻表でも確認でき、四角で囲まれています。
(綿谷さん)「書いてある!書いてありますね、子どもを連れていると余裕ないから」
(鹿児島市交通局・電車事業課 末吉健治課長)「(超低床電車を)逃すと30分空く場合も。あらかじめ確認していていただけると」
超低床電車がきました。ベビーカーを少し持ち上げる必要はありましたが、畳まずに乗車できました。
(綿谷さん)「気持ち的には乗りやすい。持ち上げなくていいのはだいぶ違う。(超低床車両を)知らなくてずっと(ベビーカーを)持っていたので」
壮輝くんも乗り心地がよかったのか…(うとうと)

(綿谷さん)「飛行機とかも静か、空気を読むのかも」
乗車すること、15分。目的の電停に着きました。
(綿谷さん)「降りるときに後ろにいたので、みなさんによけてもらわないと降りられない。申し訳ない気持ち」
交通局では、子連れの利用者への配慮を呼びかけるステッカーを車内に貼っています。綿谷さんはこれまでも、乗客に手助けしてもらったことがありました。

(綿谷さん)「運転手が運転席から降りておろしてくれたり、座っていても(乗客が)ベビーカーを持っていてくれたり、すごく人がみんな優しい」
義理の両親に会えたころには、壮輝くんはぐっすり眠っていました。

(綿谷さん)「快適だったのかも(2人目が産まれて)抱っこでベビーカーでも低床電車も乗りやすいかな」
子どもを連れた人だけでなく、お年寄りや障がいのある人など、様々な人たちが利用する公共交通機関。ハード面の改修はもちろんですが、乗客同士が互いを思いやる気持ちも持っていたいものです。