緑豊かな恩納村では、集落各地に今も井戸が残されています。村内では、水を使ったある商品が多くの人に愛されています。
ぐるぐると回るタンクに、立ち上る湯気。泡が湧き立つ液体の正体は…

恩納酒造 杜氏 玉那覇諒磨さん
「発酵してぷくぷくしているんですけど、泡盛が呼吸している」
創業73年の恩納酒造所。社員わずか7人の小さな酒造所です。戦後アメリカ軍の管理下にあった泡盛製造が民間に認められるようになってすぐ、村内の有志およそ10人でスタートしました。
代表社員 佐渡山誠さん
「当初は、家畜小屋に仕込み用の甕と蒸留器を置いたくらいの小さい形でお酒をつくっていたと聞いたことがあります。想像でしかないんですけど、(当時、泡盛は)やっぱり活力源になっていたんじゃないかなという気はします」
昔ながらの製法を守り、ひと月に出荷できる泡盛は一升瓶にしておよそ4000本。その半分以上が村内で消費されていることから、まさに地元の味といえます。その決め手となるのが…
代表社員 佐渡山誠さん
「こちらが創業当初から使っている仕込み水用の水での水を使っています」
長く恩納区の生活を支えてきた嘉間良井。住民の共有財産として今も区が管理しています。
湧き水や地下水は処理に手間がかかるため、仕込み水に使う酒造所は減っていますが、恩納酒造所では定期検査を実施し、濾過した上で使っています。

代表社員 佐渡山誠さん
「とろっとしたのど越しと、香ばしさが特徴ですね。萬座の味というのはこの水を使わないと出てこないという感じですね」
地域の素材を大事に、地域の味を守る恩納酒造所。複数の団体などと連携し、新たな商品開発にも取り組んでいます。地域の直売所では、泡盛の製造過程で出るもろみ粕を活かしたパンをつくって販売しています。
恩納の駅 當山正義さん
「もろみ粕を注入したパンが萬座バケットになります。地域のものを使ってやっているので、他社の方でなかなかこういった取り組みしている企業もないようなので、美味しくいただいていますということで、お声は何度もいただいています」
またおととしからはサンゴの保全にも協力しています。つくった泡盛を恩納村漁協協力のもと、海底に沈めて1年ほど熟成。引き上げた泡盛はおんなの駅で販売し、売り上げの一部を、サンゴの再生事業に寄付しています。

恩納の駅 當山正義さん
「恩納村はやっぱり観光地としてリゾート地である程度認知されてきているが、そういった地域だからこそ、ただのお土産としてだけではなくて、海を自分対たちも保護していくという気持ちが全国的に広がっていく1つの商品になっていればいいなと感じている」
代表社員 佐渡山誠さん
「恩納村は横の繋がりが、皆さんとても心優しくて有難いところもいっぱいあるので横の繋がりを大切にして、いろんな意味で会社としても貢献していければと思っています」
「地元の方達にも愛され続けるような酒を作っていきたいです」

恩納酒造 杜氏 玉那覇諒磨さん
「やっぱり今までこの萬座を愛してもらって皆さん飲まれていると思うので、これからも変わらない味や香りだったりを守っていけたらなと思って作っています」
恩納村を訪ねると、地域の味を守り、地域のために挑戦し続ける人々の姿がありました。
【恩納酒造所の小話】
この恩納酒造所の泡盛は実は南極に持っていかれた歴史があるんです。およそ30年前に、沖縄出身の方で南極の昭和基地に隊員として派遣される方がいたそうです。そこで先々代の代表が、沖縄とは気候も真逆の南極で、しかも南半球で、泡盛を熟成するとどんな味になるのか泡盛を1本託したそうなんです。
初の試みに恩納酒造所の社員たちは『ちむどんどん(胸がどきどき)』していましたが、ウチナーンチュの性でしょうか、託された泡盛は熟成されることなく、隊員たちの間で飲み干されてしまったそうです。味の変化を探るという研究の夢は叶わなかったわけですが、また機会があれば託したいと話していました。