周囲に発したSOS救いの手は差し伸べられず…「死んでしまいたい」

孤独と不安の中で子育てをしていた被告。体調の悪化に入院することも考えたが、すでに両親は施設に入所していたため、自分が入院すると息子が1人に。息子から「ママ入院しないで」と言われ、入院は断念せざるを得なかった。当然、周囲に助けを求めることもあった。

息子が通う放課後デイサービスの職員に相談すると「(あなたは)うつだから動かないで。無理なことは一切しないで」と言われた。

母親の姿を見て、うつ病については理解していたが、自身がうつ病であるとは思っていなかった被告は、「相談したのに全否定されたように感じて、そのときぷつんと切れた感じになって、今までしてきたことができなくなった」

精神科医に相談した時も「あなたはうつだよ」「あなたが受けられるカウンセリングはない」と突き放されたように感じ、追い込まれていったという。「死んでしまいたい」という気持ちが頭に浮かぶこともあった。

「何とも言えない幸せがあった」幸福を感じる中で及んだ凶行

事件当日、ベッドで横になっていた被告は、息子から「ママ、うまかっちゃん作って」とインスタントラーメンをせがまれたが、疲れていてすぐには動けず、少し待ってもらうように伝えたという。息子にベッドまで来るよう声をかけ、腕枕をしながら言葉を交わしていると「安心して眠ってしまって。寝顔を見るとかわいいし、何とも言えない幸せがありました」(被告)。

被告はその直後に犯行に及んだ。なぜ愛情を注いできた息子を手にかけようとしてしまったのか。

被告は「息子に対する気持ちと自分の生きづらさがぶつかり合ってはじけてしまいました。私じゃない自分の制御ができなくなってしまった」と当時の心境を明かした。

たまたま目に入った携帯電話の充電コードを手にしたり置いたりを繰り返し、葛藤しながら「どうしてこんなことをしないといけないの」と自問自答したが、「死んでしまいたい」という衝動が抑えられなかった。

二重にした充電コードで息子の意識がなくなり呼吸が浅くなるまで息子の首を絞めた。そして、キッチンの包丁を手にとり、自らの首を切りつけたという。

生々しい通報記録に被告の涙

法廷では、息子の首を絞めた後、被告自身がかけた警察への通報時の音声記録が検察側によって公開された。

「息子を殺しました」

覇気のない被告の声と少しでも情報を引き出そうとする警察官の声。音声記録には生々しいやり取りが残されていた。

警察)息子さんもいるの?
被告)います

警察)住所はどこ?
被告)・・・・

警察)もしもし?
被告)・・・・

警察)住所言える?
被告)・・・・

警察)もしもし、もしもし?
被告)・・・・

警察)住所言える?
被告)※住所を伝える

警察)息子さんいくつ?
被告)9歳

警察)意識はない?
被告)首は絞めちゃったけど意識はあります

警察)子供は1人?
被告)はい

警察)会話はできている?
被告)できているけど、脳に血流が回ってないかも

警察)会話はできている?
被告)できています

警察)手で絞めた?
被告)ひもです
息子)ママも血が出てる

警察)どこから?
息子)首から。ママも一緒に入院しよう

音声記録には、意識を取り戻した息子の声も。当時のことを思い出したのか、被告は思わず涙を流していた。

結果的に息子は全治約1か月の頭部・顔面うっ血等のけがをしたものの、命に別状はなく、被告は「我に帰れた。意識を取り戻してくれて感謝しました」。あと少しで取り返しのつかないことをしていたと改めて悔いていた。