被告人質問で明かされた境遇 大好きな両親と離れ「ぽっかりと穴があいた」

20代で結婚した被告。離婚して実家で両親と暮らすことになった後、息子を出産。言葉をなかなか話せるようにならなかった息子は、知的障害「B2」と判定された。同居していた被告の母親にはうつ病の症状があり、統合失調症の診断も受けていた。
また、被告の父親は脳梗塞の後遺症で右半身が麻痺。被告自身も20歳前後から不眠症などで精神科に通院する生活を送っていた。それでも両親、息子と過ごす日々は被告にとって支えになっていたという。
ところが、2022年8月に被告の父親が施設に入所。さらに母親も同年12月に入院し、2023年6月には父親と同じ施設に入所することになった。
弁護側から「介護の負担が減ったのでは?」と問われた被告は「逆ですね。大好きな両親と他愛もない話をしていたのが一人、また一人といなくなって孤独を与えられたような。施設にいるので安心はありますけど、家にいないことでどんどん不安になって心にポッカリ穴が開いたような感じになった」と振り返った。
毎日登校に付き添い、体調不良を押して一緒に花火大会にも…息子の思いに応える被告

親一人子一人での子育てを余儀なくされた被告は、息子にできる限りの愛情を注ぐ。登校時は毎日学校まで付き添っていた。1人で登校できないわけではなかったが、「事故に遭うんじゃないかと思ったり、一緒にいられる時間は一緒にいたいと思ったりしたので散歩がてら送っていた」という。
逮捕後の鑑定留置でパニック障害と診断された被告。法廷では人混みが苦手だが、去年の夏には、息子から「花火大会に行きたい」と請われ、一緒に出掛けたエピソードも明かした。
「(花火を会場近くの)駐車場で見ようと思ったんですけど、想定以上に人が集まってくると動悸や吐き気、苦しさを感じたので息子に『ママ、具合が悪いから離れて見てもいい?』と聞いたら、『もちろん大丈夫』と。結果的に別の場所で見たときに息子が感動して泣いてくれたり『ありがとう』と言ってくれたりしたこともあった。いい子すぎると思った」
追い込まれていった被告体重12キロ減で周りからは「病的に痩せている」

被告人質問では、被告が徐々に精神的、身体的に追い込まれていった状況も明らかとなった。
1年ほど前からはそれまでの2倍の睡眠薬を服用し、午後10時に就寝しても、午前0時から2時に目が覚めてしまう。1日2~4時間しか寝ることができない日々で、被告は「睡眠という形では捉えられなかった」と話した。重ねて食事ものどを通らなくなっていた。
事件前は「朝にカロリーメイトとか、息子と一緒に夕食を食べるときにお茶碗1杯のご飯を食べる程度」。約3か月で体重が12キロも減り、身長153センチの被告は事件当時、体重36キロまで痩せていたという。