豊かな場所だからこそ、リスクとも向き合う必要性が…

クマの移動ルートを遮るための対策が「草刈り」です。

真駒内南町7丁目の町内会が、公園で草刈りを予定していると聞き、プロジェクトのメンバーで、その効果を調べたいとお願いすると、快く受け入れてくれました。

持ち込んだのは、クマの等身大パネル。

鼻先からお尻まで130センチ、足もとから肩まで、およそ90センチ。
住宅地でよく目撃される平均的な若いオスのクマの大きさです。

クマの研究をしている、酪農学園大学の下川慈生(しもかわ・いつき)さんが中心になって作りました。

下川さんは、「“みどりの回廊”がつながっている場所を判断して、優先的に対策したらいい場所を見つけられたらいい」と意気込みます。

公園に生い茂る草は、一見、高い草には見えません。しかし、入ってみると…

続く笹やぶ。奥には川が流れています。

佐藤教授は、クマは「わざわざ好んでこういうところを通るわけではないが、隠れることはある」と話します。

笹やぶの中にクマのパネルを置いて、徐々に近づけていき、公園からどのように見えるか、実験します。

公園内の複数の地点で測定したのですが、地面に高低差があり、もっとも深かったのは、遊具に近いエリアでした。前を歩く人も見失うほど背の高い草が生い茂っていて、歩くのもやっとです。

30メートル地点。すぐ近くにいる私の視界にも、クマは入らず、佐藤教授と学生の上半身しか見えません。

もちろん、公園にいる下川さんには、クマどころか人も見つけられません。

30メートルなら、見えなくても問題ないのでは?と思うかもしれませんが、札幌市によると、クマの走る速さは時速50キロほど。30メートルなんて、その気になれば2秒の距離です。ほとんどのクマは積極的に人を襲うわけではないので、すぐに走ってくるわけではありませんが、安心できる距離ではありません。

クマを置く場所を5メートル間隔で公園に近づけていきます。10メートル地点まで近づきました。笹やぶに入ってすぐの場所です。