鹿児島県のいちき串木野市で毎年、旧暦の七夕・8月7日の時期に行われる「市来の七夕踊」。400年以上続くとされる伝統行事ですが、担い手不足により、今の構成での七夕踊は今年までで休止されます。今週日曜に迫った「最後の夏」にかける地域の思いを取材しました。
地区を練り歩き、ユニークな動きや時には激しい動きで観客を盛り上げる大きな張り子の動物たち。いちき串木野市の旧市来町大里地区の伝統行事「市来の七夕踊」です。
大規模な行列や太鼓踊などからなるこの行事は、400年以上の歴史があるとされ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。全盛期には参加者が800人に上るなど、地区総出で行われる一大行事でしたが…。
(地元の人・70代)「非常に寂しい。大きな地域の絆というものがこうやって消えていくのでしょうな」
かつては14集落の青年団が中心的な担い手となってきましたが、少子高齢化などでその数は減り、退団した住民の手伝いも受け、なんとか存続してきました。しかし、それも厳しくなり、今の構成での七夕踊は、今年で休止することが決まったのです。
(地元の人・70代)「若い人はみんな出て行っていなくなるから、やっぱり続けていくのは難しい、どうしても」
(地元の人・70代)「昔は地域というのは楽しみがないから、こういうのもみんなが喜ぶ思うけど、今は個々で楽しむじゃないですか。いろんな人と顔合わせしてお話するというのは、すごく大事なことだけどね」
最後の七夕踊まで1週間を切ったこの日、地元の人たちが動物の張り子「つくいもん」を作っていました。「つくいもん」は毎年、祭りのたびに手作りされてきました。島内集落では鹿・虎・牛・鶴の4種類のうち虎を担当しています。
(島内集落 下池明さん・74歳)
「こうだったかなとか思い出しながら作っている。張り子の動物を見て楽しむ人も結構たくさんいる。最後だからいいものを作りたいなという気持ちはやっぱりある」
コロナ対策もあり、今年は「つくいもん」は行列には参加せず、会場に展示される予定です。
そして、あたりに響く太鼓と鉦の音。七夕踊のメインにあたる太鼓踊の練習も行われていました。踊りも歌も、庭割と呼ばれる指導者が口伝えで受け継いできました。全盛期には20人ほどで踊りましたが、ことしは9人だけです。
全員をリードする「一番ドン」と呼ばれる踊り手を務めるのは、寺迫集落の樋ノ口亮さんです。本来は20代の青年が担いますが、自ら志願し、38歳で2回目の大役です。
(寺迫集落 樋ノ口亮さん)
「わたしにとっては特別で、父も昔一番太鼓をたたいていたので、ぜひたたきたいなと思って。いったん締めくくりの年になるので、今までで一番きれいな踊りだったと言っていただけるように、頑張って努めたいと思う」
踊り子として初めて参加する人もいます。中福良集落の久木園孔輔さん、20歳の大学2年生です。祖母の思いをくんで参加したといいます。
(中福良集落 久木園孔輔さん)
「(祖母は)直接口に出して言ってはいないですけど、見る分にはいいけど、やると難しくて。誠心誠意仕上げていきたい」
コロナ対策で練習は1日1時間に限られているものの、いいかたちで節目を迎えたいと日々、練習を続けています。
(七夕踊保存会 堂地國男会長)
「太鼓踊りを踊れる、いい場所がもらえるというのは誇りだから。みんなそれで頑張ってきた。本当に私たちの代でやめるというのは大変残念。みんな頑張ってくれてきょうまできましたから、みんなそのつもりで腹をくくっているので、いい祭りで締めたいと思う」
地元にとって特別な今年の七夕踊は、今度の日曜日、7日に行われます。
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