日本国内で報じられる中国の動き

話を変えよう。日本では、台湾での震災に対する関心が高いだけに、現場からのリポートだけでなく、さまざまな地震関連のニュースが日本で報道される。日本国内で広がる台湾への支援の動きはもちろんのこと、中国サイドの動きも伝えられている。

中国の国連次席大使が、国連安保理の場でスピーチした。先日の地震に触れ、「中国の台湾地区で起きた強い地震について、国際社会からの同情と関心に感謝します」と述べたと報じられた。これについては、台湾の中でも、日本でも「この災いの渦中にあって、政治利用するなんて」と中国を好ましく思わない声が上がるのは当然かもしれない。

もう一つ。5月に台湾の副総統に就任する蕭美琴氏が3月末、ヨーロッパのチェコを訪問した。首都プラハにある中国大使館の外交官が、蕭美琴氏の乗った車を尾行したという。尾行した車は、途中の交差点で赤信号を無視して交通事故を起こしかけた。そのため、警察が停止させ、運転していた人物が中国大使館の職員と判明したという。

このニュースは、今回の地震と直接関係ない。ただし、被災者の救助が急務となっていた時だけに、さきほど紹介した国連での話と重なって、台湾や国際社会での怒りにつながったのではないか。

私はチェコでの出来事を、4月7日朝、NHKのニュースで知った。7日といえば、地震が起きたあとだ。ニュースの重要度で言うと、そう高いとは思わない。チェコは中国と国交を持ち、台湾とは正式な外交関係がない。チェコに駐在する中国の大使館の業務としても、大きくルールを逸脱したものではないだろう。すなわち、普段ならこの出来事は、報道するレベルではない。

それなのに、NHKがこのニュースを報道したのは、「大きな地震の起きた台湾へ圧力をかける中国の動き」として注目したのではないだろうか。それを見たり聞いたりするわれわれは、台湾に同情や共感=シンパシーに似た感情を抱くようになるのではないか。

中国はマイナス材料を国際社会に提供

各国から受ける支援は、台湾の人たちを勇気づける。台湾は国連に加盟していないが、決して「国際社会から孤立しているわけではない」と。

今回の地震を「世論戦」というテーマで話をした。台湾当局は、被災者の救護・救出に全力を挙げるとともに、国際社会の目を、台湾に向けたいという思惑も当然ある。国際政治の常識を、とりわけ特殊な立場にある台湾は、強く意識しているはずだ。

一方の中国側は「今回の地震は中国の台湾地区で起きた」と杓子定規そのままに、コメントした。こんな非常時にも、「台湾は中国の一部だ」と。むしろマイナスの材料を国際社会に提供してしまったのかもしれない。世論戦は、台湾サイドに軍配が上がっているようだ。

◎飯田和郎(いいだ・かずお)

1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。