奄美・沖縄の世界自然遺産登録1年。今回は、取り組みも進む一方で、課題も抱える自然保護についてです。
かつて地殻変動で大陸から切り離され、独自の生態系が保たれた奄美・沖縄の島々。亜熱帯の豊かな森は、この地だけの希少な生き物たちの宝庫となっていて、1年前に国内5例目の世界自然遺産となりました。
ただ、登録にあたり、世界遺産委員会からは、観光管理、河川の再生、森林管理など、貴重な自然を守っていくための4項目の課題も示されました。
その一つが、アマミノクロウサギをはじめとする希少野生動物が、車などにはねられて死んでしまう交通事故=ロードキル対策です。
奄美大島では、ロードキルで死んだアマミノクロウサギの数は去年は62匹と、過去最多を更新。今年も6月末までに31匹と、去年を上回るペースになっています。生き物が道路に飛び出すを防ぐためのフェンス設置などの取り組みも始まっていますが、増加に歯止めはかかっていません。
(環境省・奄美群島国立公園管理事務所 阿部慎太郎所長)
「啓発だけでは抑えきれない。クロウサギ個体数も増えてきて分布域も増えている。数が増えたことによって事故件数も増えてしまう。まずは県道・国道で事故件数が多い所でどういうふうに減らせるのか見てみようと(フェンスの)設置を計画している」
アマミノクロウサギが夜間に見られる場所として人気の奄美市住用町の三太郎線です。しかし、訪れる人たちの増加に伴い、ロードキルも課題となりました。
そのため、去年10月からネットで事前予約をする、時速10キロ以下で走るといった夜間利用のルールが試行されています。奄美の自然を楽しむエコツアーに取り組む喜島さんは、ルールによる一定の効果は出ていると話します。
(奄美大島エコツアーガイド連絡協議会 会長・喜島浩介さん)
「守られているとは思いますよ。ただ守れば誰でも入れるという不思議なルールではある」
(記者)「喜島さんの案内で三太郎線のナイトツアーに行きたいと思います」
ツアーで最初に出会った動物は…野生化したヤギ、野ヤギでした。生態系への影響が懸念され、県などが捕獲方法の検討を進める野ヤギ。世界自然遺産エリア近くにまで入り込んでいる実態がうかがえました。
道の真ん中でうずくまっているアマミノクロウサギも。
(喜島さん)「これで加速した車が来るとひかれる」
課題も感じた一方で、奄美の自然のすばらしさに触れる機会も。
(喜島さん)「これが奄美の世界遺産たる最大の特徴じゃないかなと私は思う。貴重なランですよね。路肩に普通にランが咲いている島」
貴重な奄美の自然を守ろうと、進む取り組み。しかし、奄美は世界自然遺産区域が人の生活圏と近いだけに、コロナ後の観光客が増える前に、より良いものに見直していく必要があると話します。
(喜島さん)「今のルールというのは人間の方にゆるいルール。逆に言うと自然界に対して厳しい。規制の在り方というのを、もう少しみんなで知恵を出し合って考えないと」
奄美が保護・保全していくべき“人類共通の遺産”、世界遺産となって1年となりましたが、その理念をどう実現させていくかは、これから問われることになります。
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