北陸新幹線 きょう延伸 ~温泉地で聞いた不安な声~

こうした期待が高まる一方で、新たな問題が浮上している。福井県の芦原温泉。毎年50万人近くの観光客が訪れる。創業140年のホテル八木は宿泊客の約3割が関西圏からの客。

あわら温泉ホテル八木 八木司常務取締役:
開湯当時から「関西の奥座敷」という名前で関西の客に支えられてきた。関西・東海の客が、もしかすると利便性が悪くなって減ってしまう不安は抱いている。

これまでは関西、東海地区の客は特急の「サンダーバード」や「しらさぎ」で、乗り換えなしでアクセスできたが、北陸新幹線の開通後は、所要時間は短くなるものの、敦賀駅で乗り換えが必要になり、料金も1000円程度上がってしまう。実際に、岐阜県からの観光客は「ちょっと乗り換えが不便かな」という。
さらに、芦原温泉駅の隣、石川県・加賀温泉駅にも新幹線が止まることも不安に繋がっている。加賀温泉は、近くに由緒ある神社仏閣や共同浴場があり、街歩きが人気で、毎年、芦原温泉の2倍の観光客が訪れる。新幹線延伸で、この差がさらに広がることも懸念している。

八木さんは「PRがおろそかになっていた」という。温泉組合の中でデータ活用に取り組む委員会の代表を務める八木さんは、各施設が管理していた宿泊データなど、オープン化を進め、予約人数だけではなく、単価や稼働率のデータを「見える化」し、街中の飲食店などにも公開。町全体で観光客を誘致する体制を整えた。
あわら温泉ホテル八木 八木司常務取締役:
地域の経済が循環していく温泉街を作っていかないと、今後長い目で見たときに、続いていかないのではないのか。「この100年に一度のチャンス」を一過性のものではないようにするために、我々は真剣に今「100年に一度のチャンス」と向き合うべき。

福井県出身の日本経済新聞社・編集委員、中村直文氏は、今回の北陸新幹線延伸をきっかけに、福井県が、滞在型の観光地を目指すことが重要だと指摘する。
北陸新幹線 きょう延伸 ~福井県の期待と不安~
――北陸新幹線開通。福井県に何を期待するか?

早稲田大学大学院経営管理研究科教授 入山章栄氏:
駅前が少し寂しい。活気づくことに期待したい。気を付けなくてはいけないのは「ストロー現象」。繋がるがゆえに、力の強いところに吸い取られる可能性もある。一番大きい金沢により資源や人がいってしまう可能性もある。福井がチャンスをうまく活かす必要がある。
――長く時間をかけて、ユニークなものをブランド化していく取り組みが必要か。
早稲田大学大学院経営管理研究科教授 入山章栄氏:
欠かせないし、時間かかる。例えば最近では、群馬県前橋市に眼鏡会社の「JINS」があるが、創業社長の田中仁氏が前橋出身で、ものすごく時間をかけて文化の街にしようとしている。音頭をとるリーダーがいて、時間をかけて変えるということが必要。金沢も市長が有名な人で(金沢駅の)駅舎がとても素敵。かなり周りの反対もあったが、その中で時間をかけて育てていった。そういうことが福井も必要だと思う。
(BS-TBS『Bizスクエア』 3月16日放送より)