“死ぬとは思わなかった”では決してすまされない

心誠くんの母親は今、とやま被害者支援センターと協力し、県内の市町村に「犯罪被害者支援条例」を広げるために活動しています。犯罪被害者支援条例は、都道府県や全国の市町村で制定が進んでいますが、富山県では去年12月、滑川市で初めて制定されただけで遅れているといいます。

条例の内容はそれぞれの自治体で異なりますが、犯罪被害者の相談や情報提供、経済的な負担を減らすための見舞い金の支給や、公営住宅への入居促進といった支援策のほか、市民や事業者が被害者支援に協力することなどが盛り込まれています。

とやま被害者支援センターは、富山県で条例制定が進んでいない背景について、「犯罪が少なく、比較的治安が良いという安心感があること」が理由だと話します。

しかし、どんな人でも事件、事故に巻き込まれる可能性はあり、しっかりとした備えが必要だと母親はいいます。母親は、苦しんでいる被害者をどう地域社会で支援すべきか、考える必要があると強調しました。犯罪によって壊された家族に対して、住んでいる自治体がサポートをする必要があり、条例は被害者の遺族の強い味方にもなるのです。

心誠くんの母親は、自分たちのような思いを誰にもしてほしくないと、犯罪被害者支援制度を県内の全ての自治体に広げていく決意です。

心誠くんの母親:
「自分が経験して困ったこと、苦しんだこと、これから生きていく人のために、もう全変えていきたいと強く思っています」

そして最後に、高校生に対し、交通事故の加害者にならないよう強く訴えました。

心誠くんの母親:
「傷ついた心や体は簡単には元には戻らないし、死んだものは戻ってこない。知らなかった、死ぬとは思わなかった。こんな言葉では決してすまされない。車を運転する中でヒヤッとすることは誰でもある。その都度、そうなった原因を自分で考えてみてほしい。運転するみんなが心がけるときっと交通事故は確実に減っていく。悲しい思いをする人が減る。ここにいるみんなは今、誰も加害者ではない。君達は自分で考えて、自分で選択することができる。その自由と責任の重さを、運転を始める今、考えてもらいたいと思います」

チューリップが大好きだった心誠くん。

亡くなる年に自由研究にしようと、自分で選んだ球根を大切に世話し、自宅の庭に咲かせました。いちごのように真っ赤な「いちごスター」という品種のチューリップです。

今は父親が大切に育て、これからも球根を増やしていく予定です。

事故からちょうど5年となる今年のゴールデンウィーク、その真っ赤なチューリップが満開となります。