国の承認と異なる不適切な方法で医薬品の原薬を製造していたなどとして、2月9日、医薬品の原薬メーカー・アクティブファーマに富山県から業務改善命令が出されました。「嘘なんですけど」「見せないような感じでするしかない」富山県の調査をめぐって交わされた社内の音声から、厳格な品質管理が求められるはずの医薬品の製造現場の実態が見えてきました。

品質保証本部長(当時):「こんなことやっとったら会社つぶれっぞ、本当に」「もう本当ダメかと思ったよな?どんだけヒヤヒヤしたと思って」
県の立ち入り調査を受けた2週間後、医薬品原薬メーカー・アクティブファーマの富山八尾工場で交わされた会議の音声です。
アクティブファーマをめぐっては、富山市の富山八尾工場で、原薬10品目について国の承認と異なる不適切な方法による製造や虚偽の製造記録を作成したなどとして、先月9日、県から業務改善命令を受けました。

県が最初にこの工場を調査したのは去年5月31日、不眠症治療薬「エスゾピクロン」の原薬をめぐる問題の調査でした。しかし、この時、県の調査は空振りに。
その2週間後、工場内で交わされた会話です。
品質保証本部長(当時):「こんなことやっとったら会社つぶれっぞ、本当に」「もう本当ダメかと思ったよな?どんだけヒヤヒヤしたと思って」

品質保証の責任者を中心とした製造管理と品質保証の基準に関するいわゆるGMP(Good Manufacturing Practice)委員会。

次の県の調査に備えてこんなやりとりも。
社員:「もうそういういろんなこと見せないような感じでするしかない」
品質保証本部長(当時):「しっかりと数字っていうものを大事にしてもらわんと本当につぶれます。今度同じことやったら絶対につぶれます」
富山県が調べようとした不眠症治療薬「エスゾピクロン」の原薬をめぐる問題。
工員が誤って大量の原料をかまに投入したにもかかわらず、廃棄をせずに別の原料を大量に加えたうえ製品として出荷していたというものでした。そのため、原料を管理する帳簿と製造プロセスの記録にくい違いが出ていたのです。
翌月の会議ではー。
品質保証本部長(当時)「今回10kg、帳簿と製造指図記録書と違ってて、それを途中で10kgは抜いて『研究に渡しました』って説明しました。それは〇〇さんの機転、嘘なんですけど」
原料を「研究に渡した」と嘘をついたというのです。県の調査についてはこんな発言もありました。
品質保証本部長(当時)「今回の立ち入り調査で富山県が満足したとは到底思えないんでまた来る可能性があるので、確実にそこを実行してください。帳簿をちゃんと実態に合わせて。合わない場合は何か理由をつけて備考欄に今回みたいに『研究に払い出しました』とか『製造途中でこぼしてしまいました』とか」「じゃないと、つじつまが合わないままいってしまって。今回みたいになんかピンポイントで狙われちゃったんで、本当に恐ろしいんですけど」
嘘をついてでも、つじつまを合わせるよう指示をしていたのです。

不適切な製造が相次ぐ県内の医薬品業界。2021年に県が業務停止命令を出したジェネリック医薬品大手・日医工は、その後の業績悪化で上場廃止に追い込まれました。これについてもー。
品質保証本部長(当時)「ばれてしまったら会社の存続に関わる。日医工がああやって身売りしたのと同じことがうちでも起こりえますので、十分に注意してください」
この会話が交わされた8日後の、去年7月20日ー。
富山県が2回目に行った富山八尾工場への立ち入り調査で、エスゾピクロンとは別の原薬を国の承認と異なる方法で製造していることが発覚します。

この翌日、品質保証本部長が役員と交わしたやりとりは…。
品質保証本部長(当時):「あと残るはサルポシンポウ(別の原薬)です」
役員:「じゃあそれさえ逃れれば何とかなるということで逆に」
品質保証本部長(当時):「いやー無理っしょ。言い逃れすること事態がちょっと厳しいですよ。ほかに案件があって、ESZ(エスゾピクロン)の時だって『おい嘘やろ』みたいな目で俺を見てましたんで」
役員:「そうなったら俺の判断ではわからんわ…。社長と相談しないと。社長呼ぶかきょう」
富山県の調査に対し、言い逃れは無理だと判断、社長に判断をあおぐとしたのです。
その後、親会社の三谷産業を中心に社内調査が進められ、今年1月、最終報告書が県に提出されました。
アクティブファーマでは「エスゾピクロン」を含め不適切な製造は原薬10品目にのぼり、工場が稼働を始めた2014年から9年間にわたって続けられていたことがわかりました。
品質保証本部長(当時)は私たちの取材に対し「公表されている内容に嘘はない。すべてさらけ出している」と話しました。
アクティブファーマの関係者によりますと、不適切な製造は社内で常態化していたといいます。

こうした実態を会社の上層部は把握していたのかー。
取材に対し、アクティブファーマの親会社の三谷産業は「製造所の責任者・管理職レベルが認識しており、役員の関与はありませんでした」と回答。
組織ぐるみの隠ぺいがあったのかについても「役員へ報告がなされておらず、製造所内の判断で行われており、会社ぐるみの隠ぺいが行われていたとは捉えておりません」としています。

入手した音声から見えてきたのは、極めて高い品質管理の基準で製造する必要がある医薬品を扱いながら、不正を行った事実を隠そうとしたり、つじつま合わせで逃れようとしたりする製造現場の実態でした。
会社側は、8日、富山県に改善計画を出しましたが、会社の体質が本当に変わるのか、県は注視する必要があります。














