瀬戸内の島々と港を舞台にした、瀬戸内国際芸術祭2022の夏会期が8月5日から始まります。隔離の歴史をテーマにしたものなど新たに制作される15作品が、一般公開を前に報道陣に公開されました。

■ハンセン病療養所のある大島の作品群


瀬戸内国際芸術祭の舞台の一つ、高松市の大島
大島にはハンセン病の療養所がある

芸術祭の舞台の一つ、ハンセン病の療養所がある高松市の大島です。

「大島の入所者が生きてこられた痕跡をインスタレーションとして表現する」

(瀬戸内こえびネットワーク・芸術祭ボランティア 笹川 尚子 さん)
「入所者の方が色んな表現を使って大島で生きてこられた痕跡というものを、インスタレーションとして表現する」

高橋伸行さんは、かつて温室として使われていた場所で制作
風雨にさらされ錆びに覆われた生活用品
モノ言わぬ持ち主の声が静かに聞こえてくる

かつて温室として使われていた場所で制作が進むのは、高橋伸行さんの作品「声の楔」です。風雨にさらされ錆びに覆われた生活用品。モノ言わぬ持ち主の声が静かに聞こえてきます。

大島の海岸近くにも作品がある
切り立った崖に作られた石の階段が作品「リングワンデルング」
隔離政策で自由を奪われてきた入所者の外の世界への思い

切り立った崖に作られた石の階段は、鴻池朋子さんの作品「リングワンデルング」です。「円を描くように同じ場所を彷徨う」という意味の作品名。国の誤った隔離政策で自由を奪われてきた入所者の外の世界への思いがにじみ出てきます。

「抜け道があるということが生きていくための重要なこと」

(アーティスト 鴻池朋子さん)
「いろんな抜け道がある、ということが、生きていくための重要なことじゃないのかなと。ひとつ完成された『パターン』とか『型』とかはあると思うんですが、そこからその人なりの小路を見つけてそれで生きていく」

■「現代の諸行無常」屋島では8月5日にオープンする観光施設に作品が

高松市の景勝地・屋島の山上
山上にオープンする観光施設「やしまーる」
館内では長さ40メートルの巨大な油絵の制作が進められている
かつてこの場所が舞台となった源平合戦・屋島の戦いがモチーフ
船や岩のジオラマも設置され迫力ある空間が演出


瀬戸内海を見下ろす屋島の山上です。夏会期に合わせて新たな観光施設・やしまーるがオープンします。館内では、長さ40メートルの巨大な油絵の制作が進められています。かつてこの場所が舞台となった源平合戦・屋島の戦いがモチーフです。船や岩のジオラマも設置され迫力ある空間が演出されています。

「膨大な自然の世界には、人間の戦いもすべて滅びてしまう」

(アーティスト 保科豊巳さん)
「昼間に戦いがあって午後に嵐が来るんですね。膨大な自然の世界には人間の戦いもすべて滅びてしまう。それが現代の諸行無常につながってくる」

日没を迎えた屋島に巨大な月が現れます。

新型コロナの感染急拡大による影響に不安を抱えながらも、真夏のアートの祭典は8月5日に開幕します。