株価は、どこまで上がるのか?

――今回の株高は通過点で、これから先の見通しは明るい?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
ずっと明るいままではない。どこかで3万5000円割れとかいう場面も来るかもしれないが、長期投資だったら、むしろ安く買えるチャンスだと。私はむしろ「1回3万円ぐらいまで下がってくれたら、もっといっぱい買いたいのに」と思っていて、せめて3万5000円ぐらいまで下がってくれたら、チャンス。どう考えたって10年後20年後の日経平均3万5000円より高いはず。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
長期投資は上がるもの、というグラフも用意している。赤い線が日経平均。日経平均は乱高下するが、下がったところを見ると、坂道みたいなところ、ここで大体下げ止まってる。これはPBR 1倍の水準、いわゆる下値メドとされる水準。

実際にPBR 1倍は下値メドとして機能してきた。どういうことかというと、株価は時価。で、この坂道のところは簿価。企業の財務諸表、いわゆるバランスシートの簿価の水準。時価と簿価が一致するところまで株価が下がると、大体そこで下げ止まることが、過去ずっと何回も繰り返されてきている。

――リーマンショック、アベノミクス前、コロナ禍・・・

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
コロナ禍のときはさすがに下に突っ込んだが、すぐに浮上してきた。こういうこと。この坂道、簿価は何かというと、株主資本。企業が決算をしたら、配当を払う。配当金を払った残りは株主資本に積み上げていく。これが内部留保。内部留保の中身が現金なのかどうかというのはまた別の議論があるが、内部留保は年々上がっていく。

時々、リーマンショックのときとか、チャイナショックのときみたいに、多くの企業が赤字になる年があった。今後もそういう年は間違いなくいつか来る。その時は、一時的にこの坂道が右下がりになるが、また黒字回復すると坂道は右上がりになって、長期的には下値メドの水準が上がっていく。

その下値メドの水準より高いところを株価は乱高下しながらゆっくりゆっくりと上がっていくものと考えれば、10年後の下値メドは今より高い。20年後はもっと高い。株価も今より高いと考えるのが普通。ただし株価指数の話。個別の株は、倒産したり、業績がものすごい悪くなったりとかいろいろあるが、株価指数は、長期的には年率5%から8%ぐらいで上がっていく仕組みになっている。ちなみにアメリカ株「S&P500」でグラフをかいても大体同じになる仕組みになっている。

――超長期で、積立で、心配な方は投資信託と。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
すぐには儲からない。目先1回元本割れすることだってある。でも長期的には銀行に置いておくよりよっぽどいい。利息なんてもう知れている。

だから一番安いときに狙って始めようなんて言っても、土台できないし、それよりも投資元本を早めに投入しておいた方が結果的には増えやすい。待っているぐらいだったら、あまり考えずに少額からでいいので、始めておく方が結果的には良いと思う。

――ここからは視聴者の質問。「日銀がマイナス金利を解除すると株価に影響はあるのかどうなるのか」ということですが。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
3月か4月にマイナス金利解除するとみられている。その時どうなるかですが、ほぼもう株価は折り込み済みなので、それで株価が日本株がショックを受けるとかショック安になるとかいうことはないと思う。

ただ、一点だけ少し注意が必要なのが、年明け以降特に2月、日本株を買いに来たのが中国の投資家のよう。どうやらそのきっかけになったのが、内田副総裁とか植田総裁がマイナス金利解除後も緩和的な環境が続くという発言を公式の場でしたのを見て、中国の人たちが「日本はまだ緩和的だってよ」と「日本株買おうぜ」というサプライズになったらしい。

あの発言は、我々日本人にとっては、当たり前で何のサプライズでもなかったが、中国の個人投資家は、今まで日本株はあまりやっていなかったから、失礼な言い方だけれども、素人なわけ。日本株は見てこなかったから「金融緩和だって」と喜んだらしい。だからより日本株を買って株価が上がっているらしい。

そういう面もあるので、もしかしたらマイナス金利を解除したときに、中国の投資家たちが「日本が金融引き締めだよ」と少し売りが出る可能性はある。一時的に値が下がることはあるかもしれないが、むしろそのときはチャンス。なぜなら緩和的な環境が続くから、もし下がったとしても、慌てる必要はない、また次第に株価は戻っていくはずだと、そう考えればいいと思う。

――最後に改めて「相場の格言」を一つ。「買いにくい相場は高い」。その心は?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
株価が高いというだけの理由で手が出にくい投資家がいる。ただ高い株価には先行の業績や人気とかそういう背景がある。足元も身の丈よりちょっと上に出てるが、これは2025年度の業績改善、8%ぐらいの増益が見込まれている。

それを先取りしてるだけだと考えれば、今の3万9000円というのもほぼ身の丈の中に入っているので、高過ぎることはない。この格言のように、単に株価が高い、バブル期、34年前と同じというだけで買いを見送るばかりだと、せっかくの果実を得られない。中身をきちんと見ることが大事。