2014年全日本総合選手権シングルス優勝など10代からバドミントン女子シングルスの最前線で戦い続けてきた山口茜(26、再春館製薬所)。唯一手にしていない五輪メダル獲得は悲願となる。シドニー五輪女子マラソン金メダルの高橋尚子キャスターがパリ五輪へ向けての意気込みとその強さの秘密に迫った。

没頭出来る趣味“ナノブロック”

パリ五輪へ向けたインタビューにあたって、フランスのシンボルであるエッフェル塔を制作出来る“ナノブロック”(最小部品5ミリ程の超ミニサイズブロック)一式をプレゼントした。

普段は“ナノブロック”に没頭するという山口茜

Q.(高橋尚子)
ナノブロックの楽しさはどんな所ですか?

山口茜:
没頭できるというか、他のこと何も考えずに黙々と組み立てるというのが時間を忘れられていい。朝起きてご飯食べているか、ブロックしているかみたいな感じです。

代名詞は粘り強い守備

山口選手は過去2大会の16年リオ五輪、21年東京五輪に出場。いずれもベスト8と思うような成績ではなかった。それでもその後は21年、22年世界選手権を連覇。さらにワールドツアーの年間女王に輝く等、五輪メダルが射程圏の位置にいる。試合ではダイビングレシーブも臆さず、粘り強い守備で主導権を握り、かつては世界ランク1位(初到達18年4月)まで上り詰めた。

攻撃の武器は“ショットの打ち分け”

攻撃の特徴を普段から練習を共にする、ロンドン五輪女子ダブルス銀メダリスト※の垣岩令佳(かきいわ・れいか) コーチがショットの打ち分けにあると分析する。
※藤井瑞希(ふじい・みずき)さんとのペアでバドミントン日本勢初の五輪メダルとなった

練習を共にする垣岩令佳コーチ、手前に山口選手

<垣岩令佳:>
後ろからの打ち分けがノータッチ(レシーブで触れる事も出来ない)をくらってしまうほど、わからない。ラケットの面は相手に向かっているが、最後で方向を変えたり、本当に最後の最後までコースがわからなかったりする。

ストレートに打ち返すショット

対戦相手はシャトルがラケットに当たるギリギリまでコースが予測出来ないため、一瞬、足が止まってしまう場面が山口選手の試合では見られる。実際のショットを披露して貰うと、同じ振り方に見えるショットが正面とクロスに打ち分けられた。

クロス(右)に打ち返すショット

目前で見ても判別出来なかったので撮影映像で分析した。同じ場所、同じ振り方からラケットの面だけをギリギリで変えている事が判明。相手にコースを予想させないための駆け引きであり、山口選手が本当にギリギリの所でコースを変更を行えるのが山口選手の攻撃面の強みとなっている。

ギリギリでラケットの面を変える事でコースを打ち分ける

Q.
相手をだますのに一番大切な事は

山口:
それまでのラリー展開であったり、それまでの点数の取り方で相手に意識づけしたりとか、予想しているのを読んで逆にしたり、意識が抜けるような場所を作ったり、というのを組み立てて作っていくのが大切かなと思う。

山口選手が唯一手にしていないのが五輪メダル。パリの舞台で自ら掲げる“笑顔の連鎖”が見られるのか。

Q.
ベスト4への壁を乗り越えるためには何がカギとなるのか

山口:
いつも通り出来るかが、カギだと思います。自分が楽しめたかどうか、最後、納得出来る形で終われるようなものが出来たらいいなと思います。

悲願の五輪メダル獲得へ


■山口茜(やまぐち・あかね)
1997年6月6日生 福井県出身 福井・勝山高~再春館製薬所
現在、世界ランク4位。