岸田総理の訪朝の可能性に言及する異例の談話を発表した北朝鮮の金正恩総書記の妹・与正氏。その思惑は何でしょうか。

きのう夜、国営通信社で日朝関係をめぐる談話を発表した金与正党副部長。「拉致問題は解決済み」と強調したうえで、個人的な考えとしながらも…

北朝鮮 金与正 党副部長
「日本が拉致問題を障害物として置かなければ、岸田総理が平壌を訪問する日が来ることもあるだろう」

日朝首脳の接触もありうる、と受け取れるメッセージ。

去年5月には過去にとらわれなければ、「両首脳が会えない理由はない」との外務次官の発言も伝えられていますが、専門家は…

慶應義塾大学 礒崎敦仁 教授
「金与正氏というハイレベルが初めて日本側にメッセージを投げてきたわけですから、少なくとも以前よりは日本に対して関心を高めていることは間違いがない」

今年1月には、こんな発信も…

北朝鮮 金正恩 総書記
「日本国総理大臣、岸田総理閣下」

能登半島地震を受け、金正恩総書記が岸田総理に宛ててお見舞いを伝えていたのです。立て続けに日本にメッセージを送る北朝鮮。その思惑はなんでしょうか。

慶應義塾大学 礒崎敦仁 教授
「日米韓の協力体制、特に日韓関係が非常に良好な中で、そこを離間策で離していきたいということ」

慶応大学の礒崎教授は拉致問題という特別な事情を抱える日本に接近し、日米韓の連携に揺さぶりをかける狙いがあると分析。談話は事実上、金正恩総書記の意向を代弁し、首脳会談に向けての岸田総理の本気度を探る狙いがあるとみています。

日本はどう受け止めるのか。

林官房長官
「談話を発出したことには留意をしております」

林官房長官はきょうの会見で談話に対する評価は避けつつも「拉致問題がすでに解決されたという主張は受け入れられない」と強調しています。

一方、韓国国内では14日に韓国が北朝鮮と伝統的な友好関係にある中米の社会主義国キューバと国交を結んだことが、今回の談話発表につながっているとの見方が出ています。

日朝最大の懸案であり、長く膠着したままの拉致問題は動くのか。

拉致被害者の横田めぐみさんの母・早紀江さんは今月、88歳の誕生日を迎えましたが、きのう、こう訴えていました。

横田早紀江さん
「どうして解決できないのかが分からない。日本政府に力がないのか、あちらの国がおかしいのか。その辺の中身が分からないのでモヤモヤしている」

娘との再会を46年もの間待ち続ける早紀江さん。事態打開につながる動きはこれから出てくるのでしょうか。