金相場の記録的上昇を予見し広く知られるようになった中国人トレーダーが、今度は銀価格の急落に狙いを定めた。銀先物のショート(売り持ち)ポジションは、現在20億元(約450億円)ほどの含み益を得ている。

表舞台に出ることを避け、主にジブラルタルで過ごす辺錫明氏は、2022年初め以降、上海先物取引所の金先物に対する強気の賭けで約30億ドル(約4700億円)を稼いできた。

ブルームバーグが取引所データと投資内容に詳しい関係者の話を基に分析したところ、辺氏は現在、上海先物取引所で最大の銀売り越しポジションを構築している。非公開情報だとして関係者は匿名を条件に語った。

この「ビッグショート」には大きなリスクが伴い、ボラティリティーの激しい銀相場で辺氏は一部のポジションで損失を被り、清算せざるを得なかった。

それでも現在、約450トン、3万枚の銀先物に相当するショートを保持しており、先週以降の銀価格急落により、含み益は約20億元に膨らんだ。

過去の損失を含めても、3日終値時点の持ち高と価格を基にすると、辺氏の純利益は約10億元に上るとみられる。銀は5日の取引でも再び下げており、一時17%急落。辺氏のリターンが急拡大しているのは、ほぼ確実だ。

辺氏はブローカーの中財期貨を通じ、1月最終週に銀のショートを大きく増やし始めた。

上海先物取引所はブローカー口座の背後にいる個別投資家の身元を明らかにしていない。だが、関係者によれば、中財期貨の貴金属ポジションの大半は辺氏自身の取引と、同氏が少数の顧客向けに直接運用する商品によるものだという。

辺氏および中財期貨は、コメントを求める電子メールに応じなかった。

取引所のデータによると、中財期貨の銀ショートは1月28日に約1万8000枚まで急増。その後、上海で銀価格が史上最高値に達した1月30日には、約2万8000枚までさらに拡大した。

投資哲学

辺氏の賭けは、数週間にわたる劇的な価格変動を受け、貴金属に対する一面的な見方を見直す動きが市場で広がる中で行われている。

多くの機関投資家が引き続き、金を金利動向や中央銀行による購入、世界的な不確実性に対するヘッジと見なす一方、銀の上昇は、経済などのファンダメンタルズではなく、主に投機的なポジションによって押し上げられた工業需要主導のラリーとみるようになっている。

辺氏は約4年前に始めた金への極めて強気なポジション構築で、中国の先物市場で名をはせ、商品取引で大きな存在感を示す一握りの伝説的トレーダーの1人となった。

ただ、多くの同業トレーダーと異なる隠遁的な姿勢と、投資哲学に関する考察がネット上で忠実な支持を集めている点で、辺氏は際立っている。

取引所データに基づく算出によれば、辺氏は昨年8月以降、銀のロング(買い持ち)ポジションを構築し、13億元を超える利益を上げていた。

しかし、11月に入ると、銀値上がりの天井を見極めようとポジションの転換を始めた。手探りでの取引が裏目に出て損失につながる場面もあった。

それでも先週以降は、満期の長い先物にエクスポージャーを分散させ、相場上昇局面でも保有を続けるなど、確信を持ってショートを維持していた。そして今、急激な銀売りがその戦略に報いている。

ブルームバーグは上海先物取引所の日次データを用いて中財期貨のポジション変化を再構成し、利益を推計した。取引所はポジションの取得コストなどの詳細を開示していないため、推計には小さな誤差が生じ得る。

原題:China Trader Who Made $3 Billion on Gold Bets Big Against Silver(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.