(ブルームバーグ):ソフトバンクグループの孫正義社長は、金融機関に担保として差し入れている同社株式をここ数カ月で21億ドル(約3270億円)減らした。人工知能(AI)分野への賭けが、変動の激しいテクノロジー関連資産の回復を後押ししたことが担保の減少につながった。
今月提出された資料によると、担保となっている株数は1940万株減少し、約1億5420万株となった。ブルームバーグが集計したデータによれば、ソフトバンクG株の孫氏保有分のうち、金融機関に担保として現在差し入れられているのは約31%で、2020年3月時点の39%前後から低下している。
孫氏の資産353億ドルの大半は、同氏が創業したソフトバンクGの株式の3分の1強を占める保有分から成る。ソフトバンクGの株価はAIブームを追い風に10月末までに200%近く急騰した。最近では同セクターのバブル懸念から上昇分の一部を消したものの、依然として13年以来最大の年間上昇率を記録する勢いだ。
同資料によると、孫氏が実質的に支配するシンガポール拠点の投資会社が現在、11億ドル相当のソフトバンクG株を保有している。これは、日本の事業体を通じて株式を管理していた従来の手法と異なる。孫氏はこれまで、ソフトバンクGの株式をみずほフィナンシャルグループやドイツ銀行、ジュリアス・ベア・グループを含む貸し手に対する融資の担保として利用し、支配下にある異なる事業体間で頻繁に株式を移転させてきた。
ソフトバンクGの広報担当者はコメントを控えた。
孫氏は投資対象を積極的に拡大しており、米エヌビディアや台湾積体電路製造(TSMC)といったAIハードウエア企業に大胆な投資を行い、今年に入ってから一時的に日本の資産ランキングで首位の座に返り咲いた。エヌビディア株はその後、売却している。
シンガポールのアシンメトリック・アドバイザーズの市場ストラテジスト、アミール・アンバーザデ氏は、ソフトバンクG株が2万5000円前後で取引されていた10月、孫氏はおそらくその機会を利用して担保から外したのだろうと指摘。 「しかしそれ以来、株価は大きな圧力にさらされている」と述べた。同氏は顧客に対し、同社株の売り持ちを勧めている。
12月5日の提出書類によると、シンガポールを拠点とするSAMウェルス・マネジメントは、孫氏が支配する日本拠点の親会社からソフトバンクG株1000万株、約11億ドル相当を借りた。書類には両事業体間の株式貸借契約の背後にある理由は記されていないが、この取引はソフトバンクGを長らく支えてきた複雑な関係網をあらためて思い起こさせるものだ。
このシンガポール資産管理会社は21年5月に設立され、ソフトバンクG株を1.9%保有する日本の事業体である孫アセットマネージメントが全額出資している。
孫氏のシンガポール投資会社は、金融街ラッフルズ・プレイスを拠点としている。運営資金を調達するため、航空機を担保とした融資を含め、銀行から借り入れしている。詳細は開示していない。
原題:Son Cuts SoftBank Shares Pledged to Lenders by $2.1 Billion(抜粋)
--取材協力:Pei Yi Mak.
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