タイとカンボジア国境で衝突が再燃し、死傷者が増え続けている。トランプ米大統領は事態の沈静化に向けて電話協議を行う意向を示している。

タイ当局は11日、5日間にわたる攻撃で、兵士9人が死亡、数十人が負傷したと発表。戦闘中に健康上の理由で民間人3人が死亡し、約19の病院が砲撃による影響を受けた。

一方、カンボジア当局者によれば、幼児1人を含む民間人10人が死亡し、約60人が重傷を負った。軍関連の死傷者については明らかにしていない。

トランプ大統領は今後、タイのアヌティン首相とカンボジアのフン・マネット首相に電話し、自身が仲介に関わった和平合意を順守するよう促す方針を示した。

トランプ氏は10日、「彼らは非常に長い間、何十年にもわたって戦ってきた」としながらも、「私自身は両国とうまくやってきた。彼らは2人とも素晴らしい指導者であり、素晴らしい人物だ。そして私は一度、事態を収拾させたことがある。今回もかなり迅速に解決できると思う。戦闘を停止させることができるはずだ。他に誰がそんなことをできるというのか。考えてもみてほしい」と述べた。

タイとカンボジアは係争地域となっている国境沿いで応酬を繰り広げており、双方が相手側の挑発によるものだと非難し合っている。タイ側はカンボジアが保有していない戦闘機を用いた空爆も実施し、戦力の優位性を示している。国境周辺にある7つの県からは40万人を超えるタイ住民が退避し、700校以上が休校となった。

今回の衝突は7月以降で最も深刻なものであり、トランプ氏による和平合意に試練となっている。双方が撤退しなければ、長年にわたる対立が拡大し、長期的な紛争へと泥沼化しかねないとの懸念が高まっている。

アヌティン、フン・マネット両首相はいずれも国内でナショナリズムを前面に押し出している。こうした姿勢は来年前半に総選挙を控えるアヌティン氏にとって、政治的に有利に働く可能性がある。

ただ、経済面で影響が大きくなりそうなのはタイだ。トランプ大統領が再び停戦を関税交渉進展の条件とした場合、輸出主導型のタイ経済にとって極めて重要な協議で、不利になる恐れがある。

カンボジア国防省は11日、タイが停戦合意の条件に違反し、一方的に合意から手を引いたと主張。タイ軍がF16戦闘機や有毒ガスの使用、民間居住区への爆撃、国境沿いの史跡の破壊など、数え切れないほどの国際法違反を犯しているとも訴えた。

一方、タイ軍はこれらの主張を繰り返し否定。軍の行動はカンボジア側の攻撃に対する自衛措置であり、差し迫った脅威を排除するために軍事施設のみを標的にしていると反論した。国防省の報道官は11日の会見で、軍事作戦がいつ終了するかについては明言できないと述べた。

原題:Thai-Cambodia Deaths Rise as Trump Says His Call Will Fix It (1)(抜粋)

--取材協力:Hadriana Lowenkron、Philip Heijmans.

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