(ブルームバーグ):ホワイトハウスは新たな国家安全保障戦略文書で、欧州が何十年にも及ぶ経済衰退や政治的検閲、移民の影響で「文明喪失」の危機にさらされていると警告。トランプ大統領が署名した29ページの同文書は、「経済衰退よりも、文化的・政治的失敗の方が欧州の生活様式を強く脅かしている」と述べた。「現在の傾向が続けば、欧州大陸は20年以内にその輪郭を失いかねない」とも指摘した。
トランプ氏の大統領職復帰からほぼ1年が経過する中、伝統的同盟関係にある米欧間でイデオロギー的な亀裂が鮮明になっている。ホワイトハウスは欧州連合(EU)による米テクノロジー企業の規制を非難しながら、欧州各地の極右政党を公然と支持、ロシアのプーチン大統領にウクライナが大きく譲歩しない限り支援を打ち切ると脅してきた。

毎年発表される戦略文書は法的拘束力を持たないが、ホワイトハウスの優先事項を示す。バイデン前政権や第1次トランプ政権での同文書は、中国など敵対国への対応に焦点を絞っていたが、今回は欧州批判に重点を置いている。
中国については、「誤った」政策が30年間続いたために「中国を豊かで強大な国にしてしまった」とし、これをトランプ大統領が「反転させた」と指摘。同盟国と連携して経済関係の「再均衡」を図ることが新たな米国の戦略だと強調した。
中国による台湾侵攻を阻止することは引き続き優先事項だとしつつ、「米軍だけに頼るべきではない」と述べ、地域諸国に防衛費の増額と、港湾などへの米軍アクセス提供を求めた。
ロシアのウクライナ侵攻についての言及は極めて短く、文書の最後に限られており、そこでも欧州首脳に対する批判を展開。戦争の解決がロシアとの「戦略的安定」を得る鍵になるとした。
「不安定な少数派政権に支えられ、民主主義の基本原則を踏みにじって野党を抑圧する欧州当局者は、戦争に関して非現実的な期待を抱いている」と同文書は述べた。
ベルギーで大半が凍結されているロシア資産を巡る対応でも、米国は一部EU諸国に計画阻止を促したとされる。
またイーロン・マスク氏のソーシャルメディアの「X(旧ツイッター)」がEUのデジタルサービス法(DSA)に違反したとして、欧州委員会が1億2000万ユーロ(約216億円)の制裁金を科したことは、米政権をさらに逆なでした。バンス米副大統領は制裁が発表される前、「EUはごみのような理由で米企業を攻撃するのではなく、言論の自由を支持すべきだ」とXに投稿した。
米戦略文書はさらに、移民管理や言論統制といった欧州の失策は欧州自身の責任だと主張。対欧州政策の目標として「ウクライナ戦争の早期終結」と、「欧州内の抵抗勢力育成」、米企業への市場開放、北大西洋条約機構(NATO)の拡大阻止を掲げた。
その上で「欧州は米国にとって戦略的にも文化的にも依然重要だ」とし、「欧州を見捨てる余裕はなく、そうすればこの戦略が目指す成果は自(おの)ずと得られなくなる」と述べた。
原題:US Consumer Spending Stalled in September, Inflation in Line (3)(抜粋)
--取材協力:Anthony Halpin.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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