(ブルームバーグ):ウクライナの汚職対策当局は、イェルマーク大統領府長官の自宅を家宅捜索した。イェルマーク氏はゼレンスキー大統領の最側近で、米主導の和平交渉で圧力にさらされているウクライナは大型汚職疑惑にも揺れている。
家宅捜索は国家汚職対策局(NABU)と特別汚職対策検察(SAPO)が28日早朝に実施した。イェルマーク氏は、捜査員らが自宅で「手続き上の措置を行っている」と認め、全面的に協力しているとテレグラムへの投稿で明らかにした。
イェルマーク氏は「捜査を妨げるものは何もない。捜査員には全面的な捜索が保証されており、自分の弁護士も現場に立ち会っている」と投稿した。
NABUは声明で、「枠組みの範囲内で捜査活動を実施」しているとしたうえで、詳細は追って明らかにすると説明した。
政権の中枢を担うイェルマーク氏に対する捜査は、ロシアによる侵攻を終わらせるための外交努力に水を差し、支援国のウクライナに対する信頼を損ねる恐れがある。週末には米国の代表団がキーウを訪問する予定もある。
エネルギー関連で1億ドル(約156億円)にも及ぶ公金横領疑惑が政権上層部にも広がり、ゼレンスキー氏自身がどこまで関知していたのかについても疑問が持ち上がる中で、ゼレンスキー氏は汚職根絶を約束した。
現場に記者を派遣しているウクラインスカ・プラウダ紙によると、NABUとSAPOの両機関の捜査員約10人が28日早朝にキーウの官舎がある一角に入った。
この捜査で、ゼレンスキー氏の苦境はいっそう深まる。ロシアに全面的な譲歩を求める米国の新提案に抵抗している同氏は先週、イェルマーク氏を米代表団との交渉責任者に指名した。
イェルマーク氏はゼレンスキー氏の最側近で、2020年から大統領府長官を務めている。疑惑を受けて与党内からもイェルマーク氏の解任を求める声が上がったが、ゼレンスキー氏はイェルマーク氏への絶対的な信頼を表明し、解任圧力を退けていた。
この疑惑を巡っては、既に閣僚2人が辞任に追い込まれている。
原題:Ukraine Anti-Graft Bodies Raid Top Zelenskiy Aide’s Home (1)(抜粋)
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