(ブルームバーグ):企業買収資金の調達をめぐり、銀行とプライベートクレジットが主導権を争う中、JPモルガン・チェースは圧倒的な資金力で、市場で際立った存在感を放っている。
JPモルガンはこれまで、有望な資金調達案件を獲得するため、手厚い融資パッケージを提供し、プライベートクレジット運用会社やウォール街の競合を突き放してきた。まず、3Gキャピタルによるスケッチャーズ買収で80億ドル(約1兆2500億円)の融資を主導。続いて、大手メディア企業ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの二分化を支援するために175億ドルを用意した。
最も象徴的な案件は、米ゲーム大手エレクトロニック・アーツ(EA)の買収を支える200億ドルの資金提供だ。レバレッジド・バイアウト(LBO)成立に向けて、銀行1行が確約した資金規模としては過去最大だった。EAの買い手となった企業団の一つ、米プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社シルバーレイク・マネジメントのエゴン・ダーバン氏がJPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)に電話をかけてから、わずか11日で話がまとまった。この取引に関する業務で、JPモルガンおよび後から加わった銀行団が受け取る手数料は、約5億ドルにのぼった。
もっとも、ダイモン氏は信用市場の現状について繰り返し警鐘を鳴らしており、JPモルガンのバンカーもリスクが過大と判断すれば取引を見送る姿勢を取る。
JPモルガンのグローバル資本市場部門責任者ケビン・フォーリー氏はインタビューで「一度やると決めたなら、徹底的にやる」と述べ、「取引について確信があるかどうか、われわれはそのどちらかだ。中途半端な判断はしない」と語った。
総資産4兆6000億ドルを誇る同行は、続くライバルのバンク・オブ・アメリカ(BofA)を約3割上回る規模で、この資金力が買収資金調達ランキング首位の原動力となっている。
近年、プライベートクレジット大手のアレス・マネジメントやアポロ・グローバル・マネジメントが大型案件を次々手掛ける中、資金調達がシンジケートローン市場からプライベートクレジット市場へ、そして再びシンジケートローン市場へと揺れ戻る中で、銀行とプライベートクレジットの関係は友であり敵でもある。
JPモルガンといっても、すべてが成功しているわけではない。同行とゴールドマン・サックス・グループは先月、カーライル・グループが支援する化学メーカー、ヌーリオン向けの58億ドルの資金調達案件を取り下げた。
ブルームバーグがまとめたデータによると、JPモルガンは過去10年間のうち7回、企業買収向け資金調達の世界ランキングで首位に立っている。競争が激化する中、フォーリー氏は「商品にとらわれない」姿勢を示し、「好きな商品を選んだうえで、JPモルガンを選んでほしい」と語った。
原題:JPMorgan’s Super-Sized Checks Are Blowing Away All Other Lenders
(抜粋)
--取材協力:Fareed Sahloul.
More stories like this are available on bloomberg.com
©2025 Bloomberg L.P.