英国のマフムード内相は、繰り返し行われる抗議デモを制限する新たな権限を警察に付与する方針を示したほか、抗議活動の全面禁止を巡り既存の法律を見直している。英国では数週間にわたって続くデモ活動で多数の逮捕者が出ており、治安当局の対応能力を圧迫している。

英国では4日、親パレスチナ団体の活動が禁じられたことに対して抗議するデモがロンドン中心部のトラファルガー広場で実施され、約500人が逮捕された。2日にマンチェスターで発生したシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃事件を受け、スターマー首相は同デモの中止を求めていた。

マフムード氏は5日の声明で「抗議の権利はわが国における基本的な自由だ。しかしこの自由は、近隣の住民が恐怖を感じることなく日常生活を送るという自由とのバランスを取られなければならない」と述べた。

一方、親パレスチナ団体「パレスチナ・アクション」の活動禁止解除を求めたデモの主催団体「Defend Our Juries」は、マフムード氏の声明について「われわれの民主主義に対する異常かつ新たな侮辱」と非難。11月に予定されているパレスチナ・アクションに関する高等法院での審理に合わせて一連のデモを実施するなど政府方針への対応が「大幅に深刻化」すると表明した。

マンチェスターでのテロ事件を巡り、英国では労働党が率いる現政権に対して、ユダヤ系コミュニティーの安全を確保する取り組みが不十分ではないかと批判する声が上がっている。

英国政府は9月、パレスチナを正式に国家として承認した。しかし国内各地では、ガザ情勢や移民政策に対する抗議デモなど大規模な活動が広がり、政府はその対応に苦慮している。デモの大半は平和的に実施されているものの、通行人への威圧的な行為や反ユダヤ的な横断幕などを批判する声も出ている。

政府声明によると、同じ場所で「数週間にわたって繰り返し混乱を引き起こしている」デモの主催者に対して別の場所に移動するよう命じる権限を警察に付与する見込み。命令に従わない場合、逮捕や起訴の対象となる。政府はこの権限を可能な限り早期に付与すると説明している。

またマフムード氏は、抗議活動の実施を全面的に禁止する権限などが「十分かつ一貫して適用されている」ことを保証するために既存の法律を見直しているという。

原題:UK to Introduce Limits on Protests After Synagogue Attack (2)(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.