「国の恥の日」9月18日に「一緒に歴史を伝えたい」
式典が行われた9月18日は、中国にとって特別な日だ。
1931年9月18日、旧日本軍は遼寧省瀋陽(旧奉天)近郊の柳条湖で南満州鉄道の線路を爆破。これを中国側の犯行だとして軍事行動を拡大、中国東北部を占領する「満州事変」の発端となった。そのため9月18日は「国の恥を忘れてはならない日」といわれ、18日になるとSNSには「歴史を忘れるな」「国の恥を忘れるな」などの投稿があふれた。

なぜこの日に式典を開いたのか。主催者の一人、林伯耀さん(86)は「9月18日はすべての中国人にとって忘れることができない日ですね。その日に一緒に歴史を忘れない、歴史を次の人に伝えていく、みんなで努力しようという誓いの場として式典を開きました。日中間でこのような歴史があったことを知って欲しい」と述べた。そのうえで「日本の報道は広島や長崎といった被害の報道が多いが、その前に何があったのかを多くの日本人に知って欲しい。恨みとか報復ではなく、二度とあってはならない過去の惨劇、二度と起こさないために我々日中両国民はどうすればいいのか一緒に考えたい」。
林さんは在日中国人2世にあたる。「僕は日本で生まれ育って日本が好きなんです。子供も孫も日本にいます。日本と中国が世世代代、友好を続けて欲しいという当然の期待がある。でも今の日本の雰囲気は心配です。中国を敵視する、嫌中の動き。世論の9割が中国が嫌い。これは非常に異常です。何かが間違っている。日本人にも良心と誠意がある人がいます。それを信頼しています」
中国に眠る2000の遺骨が語ること

烈士陵園の中にある「在日殉難烈士労工記念館」には花岡事件など強制連行の犠牲者の遺骨が納められた部屋がある。戦後、日本から民間人の手によって送還されたものだ。その数2314。遺族たちはいとおしそうに遺骨が入った箱をなでたり、深々と拝礼して、異国の地で命を落とした祖先を偲んでいた。

曾祖父を亡くした李思思さん(35)は「すべての日本人がこの歴史を忘れないことを願っています」と話した。

父が、祖父が。涙を浮かべながら日本で無念の死を迎えた親族について語る人たちの顔を見ていると、戦争は遠い過去の「歴史」「記録」ではなく今なお続く「現在」なのだと思い知らされる。戦後80年。天津の地で静かに眠る遺骨、そしてなお祖先の無念を忘れない遺族たちの姿は日中の間の歴史を忘れないで、二度と繰り返さないで、と訴えている。
文 JNN北京支局長 立山芽以子
