Z世代への広告効果を高めるためにインフルエンサーを起用する動きが広がっている。この世代の購買力に期待する世界の大手企業は、より多くの広告予算をソーシャルメディアに振り向けるようになっている。

コーチといえば、ショッピングモールで割引の代名詞のように見られていた時期もあったが、インフルエンサーがハンドバッグのコレクションを「TikTok(ティックトック)」で広めてから売り上げが急増。一躍Z世代のステータスシンボルとなった。

経済の低迷で広告予算が絞られる中、Z世代への訴求力のあるインフルエンサーのお墨付きを得ることで売り上げを伸ばす企業が増えている。

これまで主流の広告手法だったテレビCMや屋外広告は費用対効果が読みにくい点が課題となっていた。一方で、インフルエンサーによる宣伝は柔軟性が高く、セレブの起用よりコストパフォーマンスが高いと評価されている。

統計データプラットフォーム、Statistaのデータによると、インフルエンサーによるマーケティングの世界市場は、2024年から25年にかけて36%成長し、330億ドル(約4兆7600億円)に達する見通し。

「今年は、ユーザー生成コンテンツとそのプラットフォームによる広告収入が、プロが制作したコンテンツの広告収入を初めて上回る年になる」とWPPメディアのビジネスインテリジェンス担当グローバルプレジデント、ケイト・スコット・ドーキンス氏は指摘した。

 

消費財メーカー、ユニリーバの最高経営責任者(CEO)に最近昇格したフェルナンド・フェルナンデス氏は、インフルエンサーの起用をこれまでの20倍に増やしてソーシャルメディア第一のマーケティング戦略を導入する方針を示しており、広告予算に占めるソーシャルメディアの割合を従来の30%から最大50%に拡大する。

Statistaのデータでは、インフルエンサーをマーケティングで活用する米国企業は25年には86%まで増加すると予想されている。

 

世界のZ世代層の購買力は4500億ドルに上るとされる。テンプル大学フォックスビジネススクールのジェイ・シンハ准教授は論文で、この世代のように目が肥えてシニカルな層には、フォロワーの数が1万から10万程度の「マイクロインフルエンサー」が強い影響力を持つと分析している。

 

一方でインフルエンサーの起用にはリスクもある。ドイツのスポーツ用品メーカー、アディダスは、「カニエ・ウェスト」から改名したYe氏とパートナーシップを結んでいたが、Ye氏がソーシャルメディアへ反ユダヤ主義的な投稿をしたことで経営に大きな打撃を受けた。

AIインフルエンサー

こうしたリスクの回避策として注目されるのが人工知能(AI)が生成するインフルエンサーの台頭だ。すでにインスタグラムやTikTokで数多くのフォロワーを持つアカウントも出現している。

ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によるとメタ・プラットフォームズは、広告用の画像や動画、テキストの作成、それにターゲット層の設定などをAIで自動化する計画だという。

メディア・テクノロジー会社エビクイティのルーベン・シュルース氏は「人間とAIどちらが顧客への訴求力で勝るのかを比較するのはとても興味深い試みになる」としたうえで、AIへのシフトによってインフルエンサーが生計を脅かされる可能性もあると話す。

原題:Influencer Marketing Gains Ground as Global Ad Budgets Tighten(抜粋)

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