(ブルームバーグ):韓国大統領選で勝利した李在明氏が4日、大統領に就任した。折しもトランプ米大統領が鉄鋼・アルミニウムの関税を2倍に引き上げたタイミングで、李氏は、関税措置によって脅かされている韓国経済の復活を約束した。
ソウルの国会での就任式で、李氏は「まず、国民の生活と経済を回復させることから始める。国家予算を起爆剤に、経済の好循環を復活させる」と述べた。
米国は4日、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税を25%から50%に引き上げた。韓国は、自動車、鉄鋼、アルミニウムに課せられた部門別関税に加え、現在は一時停止中の上乗せ関税もかけられている。

輸出は韓国の国内総生産(GDP)の4割超を占め、米国との通商交渉は、李氏が外交関係と国内の懸念とのバランスをどう取るかを示す最初の試金石となる。李氏は近くトランプ氏と会談する見通しだが、米国との合意を急ぐべきではないと発言している。以前、「韓国のために良い取引ができるのなら、必要ならどんな屈辱もいとわない」と述べたこともある。
選挙戦で李氏は、当選した場合、家計と企業を支援するために最大35兆ウォン(約3兆6900億円)の景気刺激策を講じると表明していた。

債券市場では、李政権が尹錫悦前政権よりも財政政策に寛容になるとの見方が波及し、韓国10年債先物価格は100ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)以上下落した。
株式市場は、政治的安定の回復や企業統治改革への期待から上昇した。韓国総合株価指数(KOSPI)は4日、一時2.5%上昇し、4月の安値から20%超の上昇幅となった。投資家らは、李氏の改革、成長路線の恩恵を受けると見込まれる銘柄に資金を投じている。
米日韓連携継続へ
李氏は、米国との強固な同盟関係と実利的な外交を基盤とし、米国、日本との三国間協力の強化を引き続き推進する方針も表明した。
北朝鮮に対しては前政権の強硬路線とは一線を画し、意思疎通の回復を目指すと述べた。ただし、「対話は力の立場から行う」とし、韓国の国防予算が北朝鮮の経済規模の2倍に上ると強調した。
李氏は「平和がいかに高くつこうとも、戦争よりはましだ。戦って勝つより、戦わずに勝つ方が望ましい。最も確かな安全保障は、戦わずして成り立つ平和から得られる」と訴えた。
米国は、李氏の勝利に祝意を示し、時代に即した同盟関係を目指し、安全保障協力を継続すると表明した。
ルビオ米国務長官は声明で「米国と韓国は、相互防衛条約、共有する価値観、強固な経済的つながりに基づいた鉄壁の同盟関係を維持している。米日韓三国間協力も引き続き深化させ、地域の安全保障を強化し、経済の強靱性を高め、民主的な原則を守っていく」と述べた。
李氏が直面する喫緊の安全保障課題を象徴するかのように、タス通信は4日、プーチン大統領の側近であるショイグ安全保障会議書記が同日、北朝鮮の金正恩総書記との会談のため平壌を訪れたと報じた。
李氏は、与党「共に民主党」所属で、過去に北朝鮮との核交渉で韓国代表務めた魏聖洛氏を国家安保室長に起用した。また、首相には選挙対策本部長を務めた民主党の金民錫氏を指名した。
原題:Tariffs, North Korea Cast Shadow Over Lee’s First Day in Office(抜粋)
--取材協力:Jaehyun Eom、Youkyung Lee、Sanjit Das.
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