22日の日本市場では円相場が1ドル=143円台前半に上昇。日米財務相会合を終え円高誘導への過度な警戒感が後退し、朝方は円売り・ドル買いが強まったが、米国の財政リスクに対する根強い懸念でドルの上値は重かった。金利の上昇(債券価格は下落)が続き、株式は続落した。

ベッセント米財務長官と加藤勝信財務相は、為替レートは市場で決定されるべきであり、ドル・円相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を反映しているとの認識を再確認した。米財務省が声明で明らかにした。水準については議論しなかったという。両氏は主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が行われているカナダで会談した。

一方、前日の米市場は膨張する財政赤字への懸念が表面化し、債券と株式、ドルがそろって売られるトリプル安。日本でも金利の上昇が止まらず、リスク回避の円買いが出やすい環境にもある。DBS銀行のラディカ・ラオ氏は、米金利の上昇に反応してドルも弱含み、リスク資産のような動きをしていると指摘。これらを総合すれば、「米国売り」の取引が再び本格化していると述べた。

外国為替

東京外国為替市場の円相場は1ドル=143円台前半に上昇。為替レートは市場で決定されるべきだとの見解で日米の財務相が一致し、朝方は144円台前半まで円安・ドル高方向に振れたが、国内外の株安を受けたリスク回避の円買いに次第に押された。

岡三証券投資戦略部の武部力也シニアストラテジストは、5月上旬の142円50銭付近を抜けると140円をトライし、そこを抜ければドルは節目を失い、一段安の可能性があると分析。日米財務相会合では水準の議論はなかったが、「日本はコメの価格高騰で大騒ぎし、物価上昇を抑えるには円高にするしかなく、日米両政府とも緩やかな円高を受け入れることで思惑は一致している」と推察した。

為替市場は引き続きG7のメッセージや要人発言に神経質な展開が続く見込み。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストはリポートで、G7後に「共同声明がなかったり、あっても為替に関する文言が削除されれば、米国がドル安誘導を望んでいると市場が解釈し、ドル安圧力が強まる可能性」に言及した。

債券

債券相場は下落。超長期債の需給悪化への警戒感や日本銀行の野口旭審議委員の発言を受け売りが優勢となり、利回り曲線のスティープ(傾斜)化が進んだ。

SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、超長期債への売りと野口審議委員の発言で一段と下げたと指摘。日銀オペ対応に関連する慎重な発言は、同氏が「ハト派とされているだけに、反応があったようだ」と述べた。

野口審議委員は22日、宮崎県金融経済懇談会で講演し、政策金利の調整では「ほふく前進的なアプローチが重要」と発言。講演後の記者会見では、超長期金利の上昇に対して日銀がむやみに介入することは適切でないとの見解を示した。

財務省はこの日、10年物価連動国債入札を実施した。最低落札価格は100円05銭と市場予想の99円00銭を上回り、投資家需要の強弱を反映する応札倍率も3.04倍と前回2月(2.76倍)を上回った。

新発国債利回り(午後3時時点)

株式

東京株式相場は続落し、日経平均の終値は2週間ぶりに3万7000円を割り込んだ。米市場で金利上昇を背景にS&P500種株価指数が1カ月ぶりの下落率となり、投資家心理が悪化。為替の円高進行も買い意欲をそいだ。

業種別33指数は輸送用機器や電機など輸出セクター、在庫増加によるニューヨーク原油市況の続落を受けた鉱業や石油・石炭製品、卸売りなど27業種が下落。非鉄金属や医薬品など6業種は高い。売買代金上位では東京エレクトロンやトヨタ自動車、三井物産が安く、古河電気工業やアシックス、中外製薬は上げた。

MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストは、グローバルに金利の上昇が意識される中、日本は決算発表の一巡や相場回復の一服が重なったと言う。 日米の関税交渉については米国が品目別関税の見直しを前向きに行う様子はなく、「ポジティブな材料が出てきづらい」と見ていた。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

--取材協力:Anand Krishnamoorthy.

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