米アイオワ州のグリネル大学は長年、恵まれた立場にあった。数十年前、著名投資家ウォーレン・バフェット氏の助言を受けて、この小さなリベラルアーツ大学は基金を27億ドル(約3960億円)まで増やし、国内有数の手厚い奨学金プログラムを資金面で支えてきたのだ。

同大とバフェット氏の関わりは、1925年に卒業し、その後約60年間理事を務めたジョー・ローゼンフィールド氏にさかのぼる。大学によると、ローゼンフィールド氏が理事会に加わった当時、同大基金の規模は10万ドル未満だった。同氏はいとこの紹介でバフェット氏と出会い、二人は深夜の電話でよくアイデアを交換したという。現在、グリネル大学は運営予算の60%以上を基金の拠出金で賄う。

だが、その成功が今、問題となっている。

下院共和党が今週発表した税制改革案の草案では、私立大学に対する税金を大幅に引き上げる方針が示された。課税基準は基金の規模ではなく、生徒一人当たりの金額に基づくとしている。トランプ政権が監視しているエリート校だけでなく、学生への経済援助を基金に大きく頼る小規模なリベラルアーツ大学も影響を受けることになる。

法案では、ハーバード大学、イエール大学、プリンストン大学など、学生1人当たり200万ドル以上の基金を持つ大学に対し、21%の税率を提案している。学生1人当たり125万ドル以上なら税率14%となるが、いずれにせよ、現在の1.4%からは大幅な引き上げだ。

グリネル大の基金規模は、2024年度は学生1人当たり約150万ドルだった。ペンシルベニア州のスワースモア大学やカリフォルニア州のポモナ大学など、他の大学も税負担増のリスクに直面している。

学生支援に懸念

グリネル大学では、1700人の学生の90%以上が、何らかの形の援助を受けている。援助を受けない場合、授業料と住居費を含む年間の総費用は9万ドルを超える。

アン・ハリス学長はインタビューで「私たちは、これまで提供してきたような経済支援を継続する上で、深刻な課題に直面することになる」と懸念を示した。

ハリス氏は、増税による負担増は約3000万ドルに上ると推計し、約1億9000万ドルに上る同大学の予算に重大な影響を与えると指摘した。同氏によると、直近の年度で大学が支払った税金は約240万ドルだった。

学生約1700人を抱えるスワースモア大学の広報担当、アンディ・ヒルシュ氏によると、同大も年間運営予算の60%以上を基金に依存している。ヒルシュ氏は、税制改正法案は小規模リベラルアーツ大学に「壊滅的な打撃」を与え、奨学金提供能力を損なうと述べた。

法人税並み

現在の1.4%の税率は、基金の規模が学生1人当たり50万ドル以上の学校に適用されるもので、全米1700 校の私立非営利学校のごく一部にしか影響が及んでいない。23年は56大学から計3億8000万ドル以上の税収があった。

今や、裕福な米大学は21%の法人税に匹敵する税負担に直面する。こうした学校は、トランプ大統領の高等教育機関再編の取り組みで標的となっている。背景にあるのが、反ユダヤ主義への対策不備や多様性への過度な重視、左寄りの偏見といった批判だ。

米下院歳入委員会はウェブサイト上で、この法案は「大企業やその他の非課税団体のように運営されている過度に敏感なエリート大学に説明責任を課し、税制を通じて提供される手厚い優遇措置の悪用を防ぐ」としている。

 

大学側は、最も支援を必要とする学生たちに増税の負担が転嫁されるとして、連邦議会に対してロビー活動を展開している。ハーバード大は、ボンディ司法長官がかつて勤務していた、共和党に近いロビー活動会社を利用している。

税制改革法案は、議会で審議される過程で、詳細が変更される可能性もある。グリネル大学のハリス学長は、アイオワ州選出のグラスリー共和党上院議員と、この問題について話し合っていると明かした。ハリス氏は、同大学が学生への学資援助に基金を使用していることを、グラスリー氏に改めて伝えたという。

ハリス氏は「誰かが私の話に耳を傾けてくれるなら、いつでもワシントンへ飛ぶ」と述べた。

原題:Buffett-Backed College Faces Tax Threat After Investment Success(抜粋)

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