(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのクノット・オランダ中銀総裁は13日、米貿易政策に伴う不確実性が短期的にはインフレと経済成長を抑制する可能性が高いが、その一方で中期的な物価への影響は不透明との見解を示した。
クノット氏はアムステルダムでのイベントで、消費者が景気の悪化や失業率の上昇を懸念し、支出を先送りする動きが出ていると説明。一貫性を欠く米貿易政策について、「短期的に見れば経済成長にとって間違いなくマイナスだ。恐らくインフレにとってもマイナスだろう。ただ、中期的なインフレへの影響はやや不透明であり、今後注視していく必要がある」と語った。
トランプ米大統領の関税政策がユーロ圏に与える影響は、ECBが金利政策を決定する上で重要な要素となる。ECBは2024年6月以来、既に7回の利下げを実施している。来月の追加利下げや、その後の追加措置に前向きな見方がある一方で、将来のインフレリスクを懸念した慎重論も根強い。
ユーロ圏経済は1-3月(第1四半期)に予想を上回る0.4%のプラス成長を記録したが、米関税の本格的な影響が顕在化するのはこれからだ。インフレ率は年内にもECBの目標である2%に持続的に回帰する見通しだが、報復関税措置や欧州諸国の財政支出拡大による上振れリスクも指摘されている。
投資家はこのところ利下げ観測を後退させており、年内あと2回の利下げを見込んでいる。これはブルームバーグがまとめたアナリスト予想と一致する。
ドルに関してクノット氏は、投資家のポートフォリオで「オーバーウエート」から「ニュートラル」へのシフトが起こる可能性はあるものの、基軸通貨の地位は揺らいでいないとの認識を示した。
原題:ECB’s Knot Sees Trade Curbing Inflation and Growth in Near Term(抜粋)
--取材協力:Laura Noonan.
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