(ブルームバーグ):トランプ米大統領は、米国の処方薬の価格について、世界で最も薬価が安い国と同じ水準に引き下げるよう義務付ける大統領令に署名する予定だ。
トランプ大統領は、米東部時間12日午前9時(日本時間午後10時)に大統領令に署名する。薬価は30-80%下がる可能性があるとソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。「世界中で価格が上昇することで均一化し、長年実現しなかった公正さが米国にもたらされる」と見通しを示した。
12日の東京株式市場では、米薬価引き下げに伴う採算悪化の懸念が広がり、中外製薬や武田薬品工業、第一三共など医薬品株が軒並み大幅安となった。中外薬は一時7.2%、武田薬と第一三共も5%前後下げた。
米国民が支払う医療費は世界で最も高く、それがイノベーション(技術革新)を促し、製薬業界の成長を後押しした側面もある。制度改革が行われれば、収入が減り、寿命と生活の改善に寄与するはずの画期的治療法の開発を阻害すると医薬品業界は主張してきた。
トランプ氏は「最恵国待遇」と呼ぶ政策を導入し、「米国民が世界中で最も薬価の低い国と同じ価格を払う」ことで、米国の医療費は「これまで考えられなかったほど減るだろう」と説明。業界の主張に言及しつつ、「米国を搾取してきた者たち(suckers)」が最終的にコストを負担することを意味すると指摘した。
今回の大統領令が具体的にどのように機能するか詳細は明らかにしていない。メディケア(高齢者向け公的医療保険)、メディケイド(低所得者向け医療保険)といった政府の医療制度のみに適用されるのか、特定の医薬品や種類に限定されるのか、より広く適用される可能性があるのかにも言及しなかった。
トランプ大統領は政権1期目でも、薬価が著しく安い日本やフランスのような国々の水準に合わせる調整を行いたいと述べていた。
2022年にバイデン前政権下で成立した「インフレ抑制法」に基づき、米政府はメディケアで用いる高額医薬品の一部について価格交渉を行っている。最初の2回の交渉には医師が投与する医薬品は含まれなかったが、次の交渉では対象となり得る。
ヘッジファンド運営会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメントを率いるビル・アックマン氏は、3月に同氏がX(旧ツイッター)に投稿したアイデアからトランプ大統領が触発された可能性を示唆した。
アックマン氏は、製薬会社が国内で販売するより安く外国で売ることを違法にすることが、米国で薬価を下げる最善の方法だと提唱していた。
12日の香港株式市場でも、中国発のバイオ医薬品メーカー、ベイジーンが一時8.8%、和黄医薬(ハチメッド・チャイナ)は6%余り急落した。
原題:Trump Seeks to Align US Drug Costs With Cheapest Ones Abroad (4)(抜粋)
(中国医薬品メーカーの株価を追加して更新します)
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