米国はウクライナのクリミア地域に対するロシアの支配を認める用意がある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにしたもので、ロシアとウクライナの和平合意の一環だという。

こうした譲歩の可能性は、トランプ米大統領が停戦合意をまとめたいとの強い意向を持っていることを新たに示している。トランプ氏とルビオ米国務長官は18日、早急に進展がなければ、米政府は和平に向けた仲介から手を引く構えであることを示唆した。

クリミアは2014年、ロシアによる侵攻と、それに続く住民投票によって一方的に併合された。国際社会はこの違法な併合の正当化を避けるため、クリミア半島をロシア領とは認めていない。

ロシア領と認めることになれば、武力による領土獲得を禁じた国際法や条約を損ねる恐れがある。ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアへの領土割譲の考えは一切ないと繰り返し表明している。

一方、クリミアをロシア領と認めるよう国際的に求めてきたロシアのプーチン大統領にとっては、今回の動きは大きな追い風となり得る。プーチン氏は今のところ、トランプ氏の広範な和平案に同意していない。

関係者によると、この件について最終的な決定はまだ下されていない。ホワイトハウスと国務省にコメントを求めたが、返答はなかった。一連の交渉に詳しい米当局者はクリミア承認の可能性に関して質問を受けたが、協議の詳細についてコメントを控えた。

ウクライナ難色も

米国は17日、ロシアとウクライナの和平合意の実現に向けた提案をパリで同盟国に提示。これには、戦闘の終結ならびに恒久的な停戦が成立した場合の対ロシア制裁緩和の条件に関する概要が含まれていたと、ブルームバーグは先に報じていた。

関係者によれば、同提案では前線がおおむね凍結され、ロシアが現在占領しているウクライナの多くの領土は事実上、ロシアの支配下にとどまる形となる。また、ウクライナが強く望んでいた北大西洋条約機構(NATO)加盟も議論の対象から外れるという。協議は機密だとして、これ以上の具体的な内容は明かされなかった。

パリではマクロン仏大統領と米国のウィトコフ中東担当特使の会談が行われたほか、ルビオ氏とフランス、ドイツ、英国、ウクライナの国家安全保障顧問や交渉当局者との会合も開かれた。

トランプ大統領は18日、ホワイトハウスでいら立ちをにじませた。ロシアとウクライナ双方が停戦に向けて前進することに期待を示す一方、いずれかに真剣さが欠けていると判断した場合には、米国は手を引く用意があると述べた。

「何らかの理由で当事者の一方が状況を非常に難しくするなら、『あなたは愚かでひどい人間だ』と言ってわれわれは手を引くだけだ。しかし、そうならないことを願っている」と記者団に語った。

ウクライナのゼレンスキー大統領(4月17日)

トランプ政権の提案は今後、欧州各国やウクライナとの間でさらに調整が必要になるとみられる。特にウクライナ側が難色を示す可能性がある。

当局者の1人は、米国の計画はウクライナ側とのさらなる協議が必要であり、最終的な合意を意味するものではないと指摘。また、欧州はロシアが支配するウクライナの領土をロシア領として認めることはないとの見方を示した。複数の当局者は、ロシアが戦闘の停止に同意しなければ協議は無意味になると強調。停戦の履行を確実にするため、いかなる合意にもウクライナに対する安全保障の提供が不可欠だとしている。

原題:US Open to Recognizing Crimea as Russian in Ukraine Deal (1)(抜粋)

(情報を追加し更新します)

--取材協力:Eric Martin、Kate Sullivan.

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