(ブルームバーグ):中国の国債市場が「日本化」への懸念に悩まされていたのはほんの数カ月前だが、利回りの急上昇は市場心理の劇的な変化を示している。
指標利回りは今週、3カ月ぶりの高水準を記録。中国が日本のようなデフレと低金利の時代に突入するのではないかという懸念をトレーダーらが後退させた。
中国10年国債利回りは1.9%を上回り、2024年初めから下げた分の約3分の1を帳消しにする5週間にわたる上昇傾向を固めた。
国債売りは、中国人民銀行(中央銀行)が人民元の防衛に固執し、流動性が圧迫され、債券市場やレポ市場での借り入れコストが上昇したことが一因だ。しかし、ストラテジストらは、より目に見えにくい要因も働いていると指摘する。
それは、市場を支配するナラティブ(物語)が恐怖から希望を感じさせるものへと変化したことだ。
マッコーリー・グループの胡偉俊チーフエコノミスト(中国担当)は「中国が日本化するというシナリオから市場は離れつつあるようだ」と述べ、中国における投資の手がかりは国債や配当株などの安全資産ではなく、今年急速に値上がりしているテクノロジー企業の株式に向かっているとの見方を示した。
米国ではトランプ大統領の破壊的な通商政策による悪影響を懸念する投資家が国債利回りを押し上げ、株式売りに回っており、中国の債券・株式市場と対照的な動きをしている。
中国の人工知能(AI)スタートアップDeepSeek(ディープシーク)がAIセクターでの中国の躍進を示し、金融市場でのセンチメントの変化を後押しした。
ただ、中国におけるデフレ懸念はまだ完全に消えたわけではない。最新の消費者物価データは、季節的要因もあって、1年1カ月ぶりに前年水準を下回った。トランプ大統領の関税は中国経済を圧迫し、習近平国家主席が取り組む中国経済の構造転換は容易ではない。
中国のイールドカーブ(利回り曲線)も平たん化。これは投資家が依然として経済に懸念を抱いていることを示す兆しだ。アバディーン・インベストメンツのアジア債券投資ディレクター、エドモンド・ゴー氏は、低インフレと成長鈍化の両方が国債利回りを抑制すると予想している。
しかし、少なくとも今のところ、日本との比較はもはや的を射ていない。
日本銀行は経済を低迷から脱却させるため、長年にわたり超緩和的な金融政策を進め、最終的に世界でも最も大胆な量的緩和策に乗り出した。人民銀はその反対の方向に向かっており、利下げに抵抗し続けるのであれば、国債利回りはさらに上昇するとアナリストはみている。
アブソリュート・ストラテジー・リサーチの新興国市場エコノミスト、アダム・ウルフ氏は「10年債利回りが2%を上回らないと考える理由は何もない。日本化されたトレードの巻き戻しが続く可能性の方が高いと思う」と語った。
原題:China’s Bond Market Is Changing Its Tune on Japanification(抜粋)
--取材協力:Shulun Huang.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.