トランプ米大統領が日本が通貨安を誘導すれば関税措置を講じる可能性を示唆したことを受け、石破茂首相は「日本としていわゆる通貨安政策は取っていない」と否定した。

石破首相は4日午後の衆院財務金融委員会で答弁した。2月の首脳会談後の共同記者会見での「第1次トランプ政権時と同様に専門家である日米の財務大臣の間で緊密な議論を継続させていく」とした自らの発言を説明。為替については加藤勝信財務相とベッセント財務長官との間で引き続き議論していくと強調した。トランプ氏と電話で協議したかどうかについて問われたが、「そのような事実はない」と語った。

これに先立ち、加藤財務相は同日の閣議後会見で、日本の為替政策について、「日本は通貨安対策は取っていないし、先般の為替介入を見ていただければ、そのことはご理解いただけるのではないか」と語った。1月29日のベッセント氏との会談でも、為替に関する基本的な考え方を確認したとも述べた。

トランプ氏は3日、日本や中国が自国通貨を押し下げれば、米国は「極めて不当に不利な立場に置かれる」と指摘。中国の習近平国家主席や「日本の指導者」に電話し、「通貨を押し下げ続けることはできないと話した」と語った。その上で、ラトニック商務長官に対し「関税率をやや引き上げなければならなくなるだろう」と言う必要が生じると踏み込んだ。

この発言を受けて円は対ドルで買われ、4日の東京市場では一時148円台後半まで上昇した。

赤沢亮正経済再生担当相も4日の閣議後会見で、日本が通貨安政策を取っている事実はないとし、「投機的な動きがあった時だけ財務省が適切な対応することになっている」との見解を示した。

財務省の公表資料によると、政府・日銀は急速な円安が進行していた2022年9月、24年ぶりの円買い・ドル売り介入に踏み切った。日米金利差を背景とした円安の流れに歯止めがかからない中、その後も同年10月、24年の4月から7月にかけて断続的に介入を実施。介入規模は合計で約24兆5000億円に上った。

(石破首相の発言を追加して更新しました)

--取材協力:照喜納明美.

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