トランプ米大統領は近く、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を新たに賦課するとともに、中国からの輸入品への関税率を20%と現在の2倍にする構えだ。カナダ産品のうちエネルギーには10%の関税率を適用する。

4日に発動予定の関税は、米経済をつくり変え、新たな歳入を確保し、米国にとって最大の貿易相手国との関係を覆す取り組みを大幅に拡大する動きで、年間約1兆5000億ドル(約226兆円)相当の輸入品に適用される。

トランプ大統領とラトニック商務長官(2月10日、ホワイトハウスの大統領執務室)

カナダとメキシコからの輸入品に対する関税はいったん延期されており、発動が再度先送りされる可能性もある。ただ、トランプ氏は4月に他の関税措置も計画しており、延期されるとしても一時的なものにとどまるかもしれない。

トランプ氏は政権1期目を合わせても最も包括的な規模となる関税を巡り、不法移民と合成麻薬フェンタニルをはじめとする薬物の米国への流入を阻止する国境対策で、カナダとメキシコに圧力をかけて要求に従わせる手段だとしている。

ラトニック米商務長官は2日、カナダとメキシコが国境管理強化に懸命に取り組んでいるとしつつも、フェンタニル流入が引き続き問題であり、関税賦課が回避されるかどうかはこうした問題が解決されるかどうか次第だと語った。

ラトニック氏はFOXニュースの番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」でトランプ氏について、「カナダ、メキシコ両国とどうしたいたの考えているところで、流動的な状況だ」とした上で、「カナダとメキシコに4日に関税を課すことになるだろうが、正確な内容は大統領とそのチームが交渉することになる」と話した。

新たな関税の導入は、トランプ氏が望む減税の一部の財源捻出に役立つほか、トランプ氏の脅しは交渉のてこにするためのはったりだとする説も、少なくとも今のところは否定することができるだろう。

しかし、関税賦課は米金融当局が抑制に手間取っているインフレの再燃につながりかねない上、自動車産業を中心とする北米のサプライチェーンを混乱させ、トランプ氏自身が政権1期目に再交渉した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」に基づき法的措置を招く恐れがある。

トランプ氏の計画は既にストレスのサインが見られる米経済を弱体化させるリスクもある。米株価や暗号資産(仮想通貨)は最近の高値から値下がりし、消費者景気信頼感は急速に悪化。インフレ抑制の進展は滞っている。新たな関税合戦となれば、一段と広範な売りの引き金となりかねない。

カナダのトルドー首相は2日、「4日の米関税賦課を回避するため、確実にあらゆる手を尽くすよう引き続き取り組むが、関税発動となればカナダとして強力で明確かつ相応の対応で臨む」と述べた。

一方、メキシコのシェインバウム大統領は、中国に対する新たな関税賦課の可能性を含め、米関税回避のための独自の措置を検討している。ベッセント米財務長官はこれを「非常に興味深い」と評価した上で、カナダにも同様の対応を促した。カナダも以前に同種の措置を発表している。

このほか中国は米国に対し、「国内の薬物需要を減らす」ことに重点を置いて、フェンタニルの使用を制限するための法執行を強化すべきだと指摘している。在米中国大使館は声明で、「米国による一方的な関税引き上げは世界貿易機関(WTO)ルールの深刻な違反であり、単独主義と保護貿易主義の典型的な行動だ」と論じた。

原題:Trump Heads Toward Tariff Barrage on Canada, Mexico, China (1)(抜粋)

(中国の言動を追加して更新します)

--取材協力:Brian Platt、Jacob Gu、Derek Decloet、Nancy Cook、Maya Averbuch、Carolina Millan.

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