マレーシア東沖に拡がる、穏やかな海域。世界で最も多くの船が行き交うその一角に、数えきれないほどのタンカーが漂っている。どれも朽ち果てる寸前の老朽船で、積載されているのは経済制裁の対象国から密かに運び出された石油だ。

取り締まりを逃れるため保険にも加入せず、通信機器を断ち切って航海する老タンカーの一群は、いつしかこう呼ばれるようになったー「闇の船団」。事故と油流出のリスクをはらむ“闇の運び屋”たちは、周辺海域の環境と船員たちの命を危険にさらし続けているのだ。

アメリカによるイランやロシアへの経済制裁が強まる一方で、各国による効果的な取り締まりが実行できないという矛盾につけこみ、大海原で繰り返される違法な石油取引。ブルームバーグ取材班は無線や衛星写真の分析などを積み重ね、ついにその実態を掴むことに成功する。
海運の要所で繰り返される違法な石油取引。それは実効性のある「制裁」の実現がいかに困難かを我々に突きつける。(ブルームバーグ2024年12月4日配信)

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