米国でも特にリベラルな都市として知られるサンフランシスコは、トランプ次期大統領と少なくとも一つの共通点を見いだそうとしている。

不法移民に寛容なサンフランシスコ市だが、昨年以降多くの移民を国外に強制退去させているバイデン政権の違法薬物フェンタニル対策を市当局は受け入れている。

そして今、ルーリー次期市長らは有罪とされた密売人を強制送還するこのプログラムをトランプ次期政権下でも続ける用意があるとしている。

サンフランシスコ監督委員会のメンバー、マット・ドーシー氏は次期政権について、「信じられないかもしれないが、同意できる点がありそうだ」と述べ、「フェンタニルの密売と中毒は合意し得る分野」との見方を示した。

フェンタニル危機への対策強化を呼びかける広告(サンフランシスコ)

移民の強制送還は人権擁護派の怒りを買っている。地元の法執行機関が連邦当局と強制送還で手を組み、移民を守ってきたサンフランシスコの政策をないがしろにしているというのが擁護派の主張だ。

ただ、有罪を言い渡された麻薬密売人を対象とした国外追放処分は、共和党のトランプ氏が唱える不法移民の大規模な強制送還と比べれば、はるかに限定的だ。

同氏の計画にはサンフランシスコ市でも抵抗が強まる可能性が高いが、民主党の牙城である同市で犯罪に厳しく対処する方針が復活したことは、来年1月に始まるトランプ政権2期目の政策に足並みをそろえる余地があることを示唆している。

全米の各都市がトランプ政権発足に備える中で、こうした地方行政の再調整が広がりつつある。ニューヨーク市のアダムズ市長は犯罪で起訴された移民の国外追放に前向きな姿勢を示し、イリノイ州のプリツカー知事は不法滞在の「凶悪犯罪者」は国外追放されるべきだと述べている。

サンフランシスコのマーケットストリート

カリフォルニア州北部の連邦検事を新たに任命するとみられるトランプ氏が、サンフランシスコの地方検察と協力するかどうかは不明だ。しかし、フェンタニル対策に重点を置くと選挙戦で訴えてきた同氏の姿勢は、サンフランシスコ市の取り締まり方針と一致している。

同市では昨年、フェンタニルを原因とする過剰摂取により810人が死亡したが、ここ数カ月は薬物による死亡者数が大幅に減少している。

ブルック・ジェンキンズ地方検事は声明で、連邦当局と協力し、「悔い改めない麻薬密売人によって人質に取られることのない品位のある安全な地域社会」を守るため今後も取り組んでいくと表明。ただ、トランプ氏との連携については引き続き不透明だという。

原題:San Francisco’s Fentanyl Deportations Show Rare Unity With Trump(抜粋)

--取材協力:Marie Monteleone.

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