(ブルームバーグ):シリアの内戦開始から10年以上を経た今月、反体制派による予想外の攻勢を受け、アサド大統領は辞任しロシアに亡命した。
権力に空白が生まれた現在、さまざまな反体制派がどう結束するかや、外国の動向が今後の鍵を握る。長期の内戦で疲弊しきっている経済の苦境が続くのはほぼ確実だ。
シリア解放機構のジャウラニ指導者とは
首都ダマスカスを制圧し、アサド政権崩壊で大きな役割を果たしたのは、反体制派を主導する武装組織「シリア解放機構(HTS)」だ。アルカイダ系だった「ヌスラ戦線」の後継組織であるHTSのジャウラニ指導者が突如として脚光を浴びている。
アルカイダは2001年9月11日の米同時多発テロの実行犯。ジャウラニ氏は米国による侵攻後にイラクのアルカイダに加わり、その後は米軍に拘束・投獄された。
HTSは米国などからテロ組織に指定されている。米国はジャウラニ氏に関する情報に対して1000万ドル(約15億円)の懸賞金を提示している。
同氏は自身が穏健派で、ある程度は自らの過去から距離を置いていると示唆している。ジャウラニ氏のグループが他の組織と合流しHTSとなったのは17年だ。
ジャウラニ氏(42)は12月6日、「言葉ではなく行動で判断すべきだと言いたい。現実がすべてを物語っている。武装組織の分類は主に政治的であり、同時に間違っている」とCNNとのインタビューで述べた。
ダマスカス制圧前、同氏は自身やイスラム過激派の戦闘員になるまでの経歴についてほとんど明かしていなかった。
手掛かりの一つは、2000年のパレスチナ人による第2次インティファーダ(イスラエル占領に抵抗する反イスラエル闘争)について語った21年のPBS番組「フロントライン」とのインタビューだ。
「私は18歳か19歳だった。占領者や侵略者に迫害されていた祖国を守るために、私は何をすべきか、そのことを当時から考えるようになった」とジャウラニ氏は話した。
同氏は戦闘員1万5000人程度を指揮しているとみられ、今後は新たに制圧したダマスカスやアレッポ、ハマ、ホムスなどでの現地統治の確立に重点的に取り組むもよう。トルコが支援する「国民解放戦線」の戦闘員もHTSに参加している。
その他の勢力は
ロシアやイラン、レバノンの親イラン民兵組織ヒズボラからの支援を受けてきたアサド氏に忠誠を誓う軍の残党が、今後どうなるかは不明だ。ここ数日のうちに解散してしまったようにもみえる。
「シリア国民軍」はトルコが支援する反体制派グループで、他の反政府派と協力してアサド政権を攻撃。まとまりのあるグループではないが、政権を転覆させ、HTSを封じ込めるという共通の目標を持っているようだ。
「人民防衛部隊(YPG)」はシリアのクルド人自治を求める民主連合党(PYD)の民兵組織で、その目標を推進できるあらゆる勢力と協力する意思を示している。
シリアに利害関係を持つ外国はどう動くのか
ロシアやイラン、米国、トルコなどの外国勢力はシリア内戦を、地域の地政学上の断層線にまたがる国で影響力を拡大する機会と捉えてきたが、アサド政権を支援してきたロシアとイランは敗者と見なされる。トルコには得るものがあり、第2次トランプ政権が来年1月に発足する米国の立場は流動的にみえる。
- ロシア
- 冷戦時代からシリアの同盟国だったロシアは15年9月に開始された爆撃作戦により、アサド政権を有利に導いた。しかし、ロシアは最近、ウクライナでの戦争を重視。そのロシアへの亡命がアサド氏とその家族に認められたと国営タス通信は報じた
- イラン
- イランはアサド政権の存続という目的を達成するために、シリアに精鋭部隊であるイスラム革命防衛隊を派遣
- 同盟により、イランはイラクとシリアを経由しレバノンへと伸びる陸路を確保し、ヒズボラに武器や装備をより容易に輸送できるようになったが、ヒズボラはイスラエルとの1年以上にわたる紛争で大きく弱体化した
- トルコ
- 複雑な立場-11年の内戦開始当初はアサド政権と手を組んだが、その後はシリア反政府勢力の支持に回った
- トルコは、内戦の混乱に乗じてシリアおよびイラクの領土を征服しようとしたアルカイダの分派である「イスラム国(IS)」に対峙(たいじ)する米主導連合軍の一員でもある
- しかしトルコは、この連合軍の中で最も効果的な地上軍YPGを繰り返し攻撃。米国が武器を提供しているYPGを敵対勢力と見なしている
- YPGはトルコの武装組織クルド労働者党(PKK)にルーツを持ち、1984年以降、断続的にトルコ国内の自治を巡り戦闘を続けている
- 米国
- 米国はアサド政権と戦うシリアの反体制派を水面下で長年支援してきたが、2017年半ばにそのプログラムを中止。14年にISに対する空爆作戦を行い、翌年には地上部隊を派遣しクルド人勢力を支援した
- ISがシリアで支配地域を失った後、米国は駐留規模を縮小したが、ISの残党と戦うために小規模な部隊を駐留させ続けている。しかし、トランプ次期大統領は、米国はシリアと「何の関わりも持つべきではない」と主張している
シリア経済の現状は
内戦は国内経済に甚大な被害を与えた。信頼できるデータが不足しているため、シリア経済の現状を正確に把握することは困難だ。
世界銀行は22年、シリアの国内総生産(GDP)が20年までに内戦前の水準である約600億ドルから半分以下に縮小したと推定。シリアは18年以降、低所得国に分類されている。
原題:Who Are the Syrian Rebels Who Ended Assad’s Rule: QuickTake(抜粋)
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