フランス国民議会(下院)で4日、バルニエ内閣の不信任決議案の審議・採決が行われる。マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いる極右政党・国民連合(RN)が左派連合「新人民戦線」と歩調を合わせ、不信任案が可決される可能性が高い。

一方、マクロン大統領は3日記者団に対し、内閣が不信任投票の瀬戸際を乗り切れると自信を示し、任期満了まで大統領職を退くつもりはないと語った。

サウジアラビアの首都リヤドを訪問中のマクロン氏は、RNが不信任決議案に賛成すれば、「耐え難いほど皮肉な投票行動になるだろう。賛成するとは信じられない」と発言。国民議会の議員らに対し、個人的野心を捨て、内閣を打倒することで国を政治的混乱に陥れるような不信任案を否決するよう呼び掛けた。

バルニエ首相は2日、2025年度政府予算案のうち社会保障財源法案について、議会採決を経ずに成立させる憲法の特例条項を行使すると表明。野党側はこれに反発し、内閣不信任決議案を提出した。

現内閣を支える少数連立与党には、左右両派の動きに対抗できる議席はない。通常は考えにくい組み合わせだが、極右政党が左派連合に同調することで、内閣を倒す十分な数が得られる。国民議会選の決選投票の結果、単独で第1党となったRNが重要なキャスティングボートを握る。

内閣が倒れれば、首相の在任期間は1958年の第5共和制成立以来で最短となる。マクロン大統領が6月に国民議会の解散、総選挙実施を突然発表して以降、ルペン氏が得た政治的力をあらためて浮き彫りにする。

ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のシニア地理経済学アナリスト、アントニオ・バローゾ氏は「ルペン氏は、マクロン大統領に辞任を迫るため、安定より政治的混乱を望んでいるのかもしれない」と分析した。

それでもバルニエ首相は3日、フランスのテレビ番組で、「責任の反射作用が起こり得る。公益や国益が何らかの意味を持つと思う」と述べ、不信任案が可決されない可能性に言及した。

フランスの政府予算を巡る不安を背景に11月28日の欧州時間の取引で、10年国債利回りは一時3.03%に達し、ソブリン債危機の震源地だったギリシャと並んだ。

12月2日には10年国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(スプレッド)が6月以降で最も大きい8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)拡大し、2012年以来の水準に近い89bpで終了した。

 

年末の予算期限直前の政府崩壊は、フランスを未踏の領域に導くことになる。不信任可決後の暫定内閣は、政府機関の閉鎖回避に向け、徴税を可能にする「特別法」の緊急措置や最低限の支出を認める法令で対応可能だが、経済と金融への影響は予測困難だ。

アルマン経済・財務相は3日、つなぎ措置に頼れば、何百万もの家計が支払う税金が増え、治安や農業など幾つかの優先分野で予定されていた支出増が妨げられる恐れがあると警告した。

「金利が上昇する経済、予算のない経済、不確実性に陥る経済では、どのセクターも、どのフランス人も、どの企業も勝者にはなれない」とアルマン氏はフランス2の番組で訴えた。

4日に内閣が倒れた場合、新たな予算案を成立させるためマクロン大統領が新首相を任命することになるが、絶対多数政党不在のハングパーラメントの現状を考えると、人選は容易でないだろう。

新首相の決定に憲法上の期限はない。マクロン氏が再び議会の解散・総選挙を実施できるのは、前回の選挙から1年が経過した来年夏以降となる。

左派連合はマクロン氏に大統領辞任を求めているが、辞めさせることは誰にもできない。次の大統領選は27年に予定されており、ルペン氏が最有力候補だ。

原題:French Lawmakers to Vote Wednesday on Toppling Government (1)、Macron Asks French Lawmakers Not to Topple the Government(抜粋)

(バルニエ首相の発言を追加して更新します)

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