(ブルームバーグ):ドイツ証券取引所の元従業員(53)が、同取引所が上場企業から得た非公開情報を利用し、3年半にわたって秘密裏に取引を行っていたことを当局に明らかにした。
イニシャルが「G.P」とだけ特定されている元従業員は、2018年1月から21年7月にかけ、14件のインサイダー取引を行った疑いで、ドイツで公判中だ。裁判初日の11日、元従業員は、ドイツ証券取引所が書類の公開30分前に入手した情報を利用していたことを認めた。ドイツ銀行や銅精錬・精製会社のアウグビスといった企業の株式を取引していたという。
元従業員は、154件のインサイダー取引について捜査を受け、資産130万ユーロ(約2億1300万円)を検察に差し押さえられた。
このうち実際にインサイダー情報が含まれていたかどうかは、大半で立証できず、起訴は14件に絞られた。エヴァマリー・ディストラー裁判長は、被告が当局に協力したことを考慮し、裁判所は16万3000ユーロの罰金と執行猶予付きの判決を下す可能性が高いと述べた。
元従業員はドイツ証券取引所に06年から勤務し、現物市場業務部門で、取引停止の是非を判断するため、企業からの提出書類の監視業務に携わっていた。
疑われている取引が行われた際、元従業員は約30人の同僚と同じ部屋におり、会社のパソコンを使って取引を行っていたという。通常、30分以内に株を売買し、その企業の情報が公開された直後に取引を解消していた。
元従業員は、最初の取引の際、1400ユーロで株を売却したが、その後の取引では最大で数千ユーロの利益を得ていた。14件の取引すべてを合計すると、16万3000ユーロの利益となった。担当弁護士フェリックス・ルッテンマイヤー氏によると、元従業員は2万7000ユーロを投資し、7万ユーロの利益を得ていた。
20年、ドイツのオンライン決済会社ワイヤーカードが、現金19億ユーロが所在不明になっていると発表した際も、この元従業員は発表前に同社株の取引を行っていた。
原題:Ex-Deutsche Boerse Staffer Confesses in Insider Trading Case (1)(抜粋)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2024 Bloomberg L.P.