中国の貿易黒字は今年、過去最高となる見通しだ。世界貿易の不均衡を悪化させ、トランプ次期米大統領による対抗措置を招くリスクを高めそうだ。

ブルームバーグの推計によると、中国の輸出と輸入の差額は、今年に入ってからのペースで拡大が続けば、通年でほぼ1兆ドル(約154兆円)に達するとみられる。先週発表されたデータによると、1月から10月までの10カ月間の物品貿易黒字は7850億ドルに及んだ。同時期としては過去最高で、前年同期から約16%増加している。

 

最新のデータによると、対米貿易黒字は前年同期比で4.4%増加した。対欧州連合(EU)の黒字は9.6%、東南アジア諸国連合(ASEAN)の10カ国に対する黒字は約36%増加した。

米外交問題評議会(CFR)シニアフェローのブラッド・セッツァー氏は、X(旧ツイッター)で「中国からの輸出は価格下落が続いているが、数量の伸びが著しい。全体的な傾向としては、輸出が再び経済成長をけん引している」と指摘した。

国内需要の低迷を補うため、中国は輸出への依存を強めている。中国政府は10月にようやく、景気刺激策を導入し始めた。

10月の貿易黒字は過去最高だった6月に迫る史上3番目の規模。人民元建てて計算すると、貿易黒字は今年9月までで名目国内総生産(GDP)の5.2%に達する。過去10年間の平均を大きく上回り、2015年以降で最高だった。

こうした偏った状況はますます多くの国々からの反発を招いている。米国のトランプ次期政権は中国製品の流入を減らそうと、関税を課す可能性が高い。南米から欧州に至るまで、各国は鉄鋼や電気自動車(EV)などの中国製品に対する関税を既に引き上げた。

 

外国企業は中国から資金を引き揚げつつある。8日遅くに発表されたデータによると、1-9月の外国直接投資は流出超となった。この傾向が年末まで続けば、比較可能なデータが存在する1990年以降、年間で初めての流出超になる。

中国政府は8日、対外貿易の着実な成長を後押しするとともに経済発展と雇用安定を促す目的で、産業向けの補助金を増強すると発表した。

中国企業はここ数年、輸出実績を伸ばしている。一方、経済の減速、電化の進展、外国製品から国内製品への置き換わりの増加により、輸入需要は低調だ。

原題:China Nears Record $1 Trillion Trade Surplus as Trump Returns(抜粋)

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