FRBの利下げ戦略はどうなるか?~インフレ鈍化に合わせて緩やかな利下げ長期化へ

リセッションが避けられるのであれば、大幅な利下げは必要ない。9月FOMCでは50bpの利下げを実施したが、この背景には景気の「気」が悪化していたことに対して①FRBも不安だったこと、②市場が信用収縮を起こせばリセッションが現実のものとなる可能性があると判断されたこと、があるのだろう。今となっては50bp利下げは不要だったと整理することは簡単だが、25bp利下げでも株価は暴落しなかったかと言われれば、絶対大丈夫だったとは言い難い。いずれにせよ、労働市場への不安が解消され、現在の金融市場は楽観的である。もはや大幅な利下げを実施する必要はない。もっとも、金利が高水準でセンチメント(景気の「気」)が弱い状況では、引き続き市場がかんしゃくを起こすリスクがある。市場が安定しているうちに利下げを進め、「今回の利上げサイクルではリセッションを回避できた」という既成事実を作ることが次のステップとなる。少なくともインフレ鈍化が進む間は、緩やかな利下げが続くだろう。リスクはインフレ動向だが、中国経済を中心とした世界経済の成長鈍化(需要の減少)は続くと予想され、コモディティ価格には下落圧力がかかると予想される。この傾向は長期化する可能性が高く、25年は中立金利を目指して利下げをするフェーズとなり、26年頃には中立金利を下回る水準まで利下げをするフェーズになると、筆者は予想している。

具体的な利下げパスは?~11月、12月FOMCは連続25bp利下げ、25年は年4回利下げへ

ウォラー理事は11月1日に公表される予定の10月雇用統計はハリケーンの影響などを含んでいることを指摘した。多少弱い結果となってもノイズを含んだものと解釈され、FRBの見通しを大きく変えることにはならないだろう(50bp利下げの可能性は低い)。他方、50bp利下げでスタートした今回の利下げサイクルを緩やかな利下げペースに変化させるにはステップを踏まないといけない。11月FOMCでいきなり利下げをスキップすることはないだろう。11月FOMCは25bpの利下げとなる可能性が高い。その後は利下げペースを減速させるために経済見通し(SEP)が公表される3、6、9、12月のFOMCで利下げを実施することを目指すと予想される。したがって、12月FOMCでも25bpの利下げが実施される可能性が高い。25年1月は利下げをスキップし、3月に再び利下げを実施するだろう。この頃には大統領選の不透明感もなくなり、利下げをスキップしても問題ない程度にセンチメントが回復しているだろうと、筆者は予想している。