(ブルームバーグ):ドイツのショルツ首相率いる与党連合が崩壊した。中道左派の社会民主党(SPD)と気候変動対策を重視する緑の党、そして企業寄りの政策を進める自由民主党(FDP)から成る連立政権では数カ月にわたり内紛が続いていた。
この異例の3党連立政権は、欧州一の経済大国であるドイツの現代化を図るという野心的な目標を掲げ2021年に発足。だが、しばしば政策面で対立し、制約を抱えていた。
16年続いたメルケル政権後のドイツの新たなスタートは、ロシアが22年2月にウクライナへの軍事侵攻を開始したことで大きな壁にぶつかった。エネルギーコストの高騰がインフレの急加速につながり、有権者を不安にさせ、ポピュリズム政党の台頭を招いた。
SPDのショルツ氏は3党間の合意取りまとめで苦しむことが多く、与党内の言い争いは有権者の支持を損ねた。同氏は6日、FPDのリントナー財務相を解任。リントナー氏が来年度予算の歳入不足を補うために新規借り入れを制限するルールを一時棚上げにする案を拒否したためだ。
ショルツ氏と緑の党はウクライナへの軍事支援増額やドイツ軍の現代化などを望んでいたが、自らを「財政のタカ派」と称するリントナー氏は譲歩を拒んだ。
なぜショルツ氏はリントナー氏を解任したのか
来年度予算を巡る連立政権内の不穏な空気と、低迷するドイツ経済の活性化策については数カ月前から議論されていた。リントナー氏は政府の追加借り入れを制限するルールの停止に抵抗。同氏が辞任を申し入れる前にショルツ氏が更迭に踏み切った。
これによりFDPは3党連立を離脱し、ショルツ政権は下院(連邦議会)で過半数割れとなった。
過半数割れは早期の総選挙につながるのか
そう単純な話ではない。ドイツの首相には早期に総選挙を実施する権限はなく、その権限を有しているのは連邦政府の大統領だ。しかし、首相は信任投票で故意に敗れ、大統領に下院の解散を要請し、早期の総選挙実現を目指すことは可能だ。その場合、総選挙は下院解散後60日以内に実施しなければならない。
ショルツ氏が狙っているのはこうしたシナリオだが、すぐに解散・総選挙に向かうわけではない。少数与党となったショルツ政権は幾つかの法案を可決させ、来年1月15日に信任投票を実施したいと考えている。
25年の予算も議会の承認が必要となる。ショルツ氏は3月前半に予定されているハンブルク地方選にも注目している。ハンブルク市長を務めた経歴のあるショルツ氏は、ハンブルク地方選で勝利し、これを国政選挙でのSPDの追い風にしようと狙う。
直ちに信任投票を行う方が妥当では
野党の保守陣営キリスト教民主・社会同盟 (CDU・CSU)が望んでいるのが、まさにそれだ。CDUのメルツ党首は、遅くとも来週初めまでにショルツ氏に対する信任投票を行うべきだとし、来年1月半ばにも総選挙が行われる可能性に道を開きたいとしている。
ショルツ氏のスケジュールでは、総選挙は3月後半まで実施されないが、リントナー氏もメルツ氏の主張を支持し、できるだけ早期の信任投票を求めている。
世論調査ではどうなっているのか
22年半ば以降の世論調査をリードしているのがCDU・CSUで、今は30%を超える有権者の支持を得ている。SPDの支持率は16%と、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に次ぐ3位にとどまり、緑の党は10%と4位だ。
FDPは議会での議席確保に必要な5%の支持率を下回っている。21年9月の総選挙における得票率はSPDが26%、緑の党が15%、FDPが11.5%だった。
どんな与野党なのか
- 社会民主党(SPD):
- ショルツ氏のSPDは中道左派。一般的に市場重視の政策を追求しているが、メルツ氏の保守陣営よりも規制が多く、社会福祉と労働者の権利保護に重点を置いている
- キリスト教民主同盟(CDU)とバイエルン州を基盤とする姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU):
- メルツ氏の陣営は、厳格な財政規律を含む保守的な政策を重視。不法移民の取り締まり強化も目指している
- 緑の党:
- ハーベック経済相とベーアボック外相の緑の党は、気候変動対策に軸足を置いている。主要産業の転換を促進するための財源として、政府の借り入れを増やしたい考えだ
- 自由民主党(FDP):
- 財務相を解かれたリントナー氏のFDPは企業寄りで、ICE(内燃機関)車の走行をより長く認めることを含め大幅な規制緩和を目指している。一方、政府の借り入れルール緩和に強く反対し、福祉費の削減を主張している
- ドイツのための選択肢(AfD):
- 極右政党のAfDは、ユーロ圏からの離脱や気候変動対策ルールの撤廃、ロシアとの経済関係再開を訴えている。一部の幹部は、移民の国外追放やナチスのスローガンを想起させるような物議を醸す発言をしている
- ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW):
- 元共産主義者のザーラ・ワーゲンクネヒト氏が今年創設したBSWも、ロシア政府との関係再構築を図りたい考えで、ドイツ国内への米国製ミサイル配備計画に反対している。増税を主張し、移民の受け入れ制限を望んでいる
- 左派党:
- 左派党は社会主義政党で、東西ドイツ統一後のドイツ政界において最も左派的なグループ。旧東ドイツ政権与党の流れをくんでいる
原題:Germany’s Government Collapsed — What’s Next?: QuickTake(抜粋)
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