年末年始にじっくりと読んでほしい、そんなニュース、話題をtys NEWS DIG編集部が厳選してお届けしています。(2023年10月「mix」放送)

全身に痛みが走る病気、線維筋痛症。原因がわかっていない病気で、痛みのほかにも、体のこわばりや激しい疲労感、抑うつなどの症状を伴います。外見上、傷などないので、周りから、体調が悪いと見られないことも多いといいます。理解を得るのが難しいこの病気を少しでも多くの人に知ってもらいたい、そして、理解してほしい。そんな思いで活動する女性を取材しました。

明日実えりさん
「冷えピタのえりこと、明日実えりの配信へ来てくれてありがとうございます。線維筋痛症、筋痛性脳脊髄炎という病気で、冷えピタを貼っております。よろしくお願いします」

自宅で配信活動

明日実えりさん、31歳。線維筋痛症を患っています。病気を広く知ってもらおうと山口県宇部市内の自宅で配信活動をしています。

発症は、小学5年生のころ。我慢できないほどの激しい頭痛が、明日実さんをおそいました。

明日実さん
「毎日ずっと頭が痛くて泣き叫んでいて、1回お医者さんに連れていってもらったけど、まだそのときは線維筋痛症っていう病気が全然今以上に知られていなかったので、『まあただの頭痛でしょう』ぐらいで」

“ナイフで切り刻まれるような”痛み

はっきりした病名が分からない中、痛みを我慢する生活を続けていました。28歳のとき仕事中に倒れ、そこから医療機関を20以上受診して、ようやく「線維筋痛症」と診断されました。

明日実さん
「人にもよるんですけど、よく例えられるのは、ナイフで切り刻まれてるような痛みだとか、ガラスの破片が血管をうごめいている感じとか、あとは大男にぞうきん絞り、筋肉をぐーっとされてる感じとか」

おでこに冷却シートのわけは?

なくなることのない痛みを少しでも和らげたい、線維筋痛症のほかにも患っている、筋痛性脳脊髄炎による熱っぽさを冷ましたいと、冷却シートを貼っています。

明日実さん
「覚えてもらうために。配信でこんなことしてます」

痛みが出たとき、医師からは無理せず休むよう言われています。対処法は人それぞれですが、明日実さんには頭は冷やすに体は温める、この方法が合っているといいます。

引きこもりもライブ配信が転機に

明日実さん
「診断が降りたあとで、もう何もかもいやになって、治らない病気とか、なんかそういうふうなことだし、いろんな人に『うそつき』とか言われたりとかすることもあるし、ずっと引きこもって、ごはんも食べず何もせず、もう終わろうみたいな感じはありました」

そんな明日実さんに転機が訪れました。ライブ配信をしてみないかと、イベント会社から誘われたのです。そこで巡り会ったリスナーに病気のことを公表しました。

明日実さん
「なんでみんな信じてくれないんだろうとか、どうしたらいいんだろうとか、困っている方がすごいたくさんいたので、こういう活動をするんだったら、そういう人の役に立てばいいなって、前向きになれたのかな。みんなが応援してくれて、なんかどんな病気でも別に偏見とかないよとかみんなが言ってくれたので」

リスナーの理解が支えに

線維筋痛症という病気を知ってもらいたい。そして『うそつき』ではないと、少しでもわかってほしい。リスナーが、自分や病気に理解を示してくれたことが、変わるキッカケになりました。

明日実さん
「私と出会う前に線維筋痛症っていう病名を知ってた人?」

この日参加していた中学生から60代までのリスナーのうち、知っていた人が3人、知らなかった人が10人でした。

明日実さん
「『線維筋痛症のこととかいろいろわかったから出会ってよかった』って。ありがとね~、ありがとね、ほんとそう言ってくれて」

そばで背中を押してくれる存在

応援してくれるリスナーの存在が、活動の原動力となっています。配信を頑張りたい理由は、もう1つ。旦那さんの存在です。

明日実さん
「一応料理するのが好きだったので、もともとパティシエしてたんで、なんか作りたいなって思うけど、握力ないし、長時間立っていられないし」

一緒に過ごせる時間が長くなるようにと転職し、ほとんどの家事を1人でこなしてくれています。歩く練習をするときも、寄り添い続けてくれます。

明日実さん
「そうですね、よくやってられるなと私的には思うんですけど、あっちが、うん。もう、なんか、何か恩返ししたいんですけどね。何もできないので」

「社会的支援広げたい」モデル活動も

1年前からはモデル活動もしています。病気を知ってもらうため、写真を投稿する時、ハッシュタグで病名をつけています。さまざまな活動を通して病気を広く知ってもらうことが、社会的な支援の拡大にもつながると考えています。

明日実さん
「私は一応ありがたいことに身体の障害者手帳がとれたんですけど、大体取れなくて、みんな精神の方で取って、それでちょっと医療費抑えるとか、そういうことしかできていないので。ちゃんと自分の病気で手帳を持てる人が増えるように、山口県内だけでも広まってもらえれば、知っていただければと思います」

「少しでも自分にできることを」

いつもは旦那さんが行う愛犬との散歩に、月に1、2回ほど調子がいい日に出かけます。明日実さんの握力は両手あわせて11キロほど。同年代女性の平均の5分の1の力で車いすをこぎます。「少しでも自分にできることを」。小さな力が、社会的支援の拡大につながることを目指し、きょうもカメラに向かいます。