震災の津波で母親を亡くしている新妻さん。
それでも、地元の復興を手助けしたいと、この場所でお店を開くことを決意して街づくりに関わってきました。

しかし、いま地元に不安もあるといいます。
●和食処とのがみ・新妻篤さん「消防団の活動も新しく関わってくれる人数が少なくて、それ自体が成り立たない。コミュニティが縮小してますね。」

避難先から戻らない住民も多いのが実情です。
新妻さん「アンコウいくらくらいでした?」
仲買人「アンコウは800円くらいかな」

この町で生まれ育った新妻さん。セリが行われる日は、こうして地元の漁港に出向き自分自身の目で魚を選びます。
Q.久之浜のものは違いますか?
●新妻さん「やっぱり鮮度が一番違う。私らも自信を持ってお客さんに提供できる。久之浜のものですよって。」
この日のランチに提供されたのは、朝水揚げされたヒラメやシラウオ、ヤリイカなど旬の海産物。常磐ものが揚がる漁港が間近にあるここでしか味わえない海鮮丼です。

新妻さんの地元愛溢れた料理を求めて訪れる常連客。ここで出会い、いつしか輪が広がっていました。
●お客さん「みんな出会いはここですよね」

お客さんの中には、震災の後に移住してきた人も少なくありません。
●新妻さん「久之浜の活きのよいものを提供して喜んでもらえるのは仕事冥利に尽きる。一番うれしいことですね。」

去年、小名浜の「いわき・ら・ら・ミュウ」にオープンした2号店でも、提供されるのは久之浜の魚です。
1号店のオープン当時、新妻さんはこんなことを話していました。
●新妻さん「これを機会に住宅が集まってくれて明るい町づくりができれば嬉しいと思います」
そして、いまも・・・。
●新妻さん「新しい人と昔からいる人が交わる場所。この店があることによってできる。」

震災からまもなく12年。変わらない新妻さんの夢は着実に前に進んでいます。
震災前の風景を単純に取り戻すことではなく、人と人を繋ぐことがこの町にとって何よりの復興。

そのきっかけが「とのがみ」であり、自分自身でありたいと新妻さんは願います。
●和食処とのがみ・新妻篤さん「おじいちゃんおばあちゃんとか、ここに来れば誰かに会えるというのがあればいい。そういう機会があって欲しいなという思いでこのお店を作りましたからね」
生まれ育った町・久之浜をこれからも守り続けていきます。
