とろろの”だし”の勢力図

「山には山の、川には川のとろろ汁が存在しているのが静岡県なんです」前田さんは県内22か所でフィールドワークを行い、地域の飲食店や家庭が「とろろ」にどんなアレンジをしているのかを調べました。それによると、静岡県東部地域ではカツオだしに醤油が優勢。富士川より西の静岡市域になると丁子屋を代表に、カツオだしの味噌汁がメジャーな組み合わせになります。ところが、静岡市の西隣、焼津市に入るとサバだしが徐々に増えてくるそうです。
<静岡県立農林環境専門職大学 前田節子教授>
「焼津はカツオの水揚げ量が多く、鰹節の生産が盛んなのですが、同じ焼津でも小川港はサバの漁獲量が多い。こうした事情からカツオとサバの2つのだしが入り交ざっているのではないでしょうか。サバだしを使う場合は、だしとしてだけでなく、身も入れることが多いのも特徴です」
さらに西の島田、菊川・掛川地域になると「サバだしの味噌汁」で伸ばす調理法がさらに優勢になるのですが、浜名湖近くになると、今度はボラやハゼなどの地魚を使っただしが幅を効かせてくるのです。