28人が死亡した2021年7月の熱海土石流災害は、違法に積み上げられた盛り土が崩れた“人災”が強く疑われています。渦中の人物である盛り土の前土地所有者の不動産会社代表が7月3日、SBSの取材に応じました。

<新幹線ビルディング 天野二三男代表>
「こういう事故になったということに対しては、遺族、亡くなられた方に対するご冥福、ご家族の心中を察すれば、大変なことだとは思う。そのためにも早急に原因を究明すべき」

土石流災害からちょうど2年となった2023年7月3日、盛り土の土地の前所有者は、遺族に対するいまの思いを聞かれると「早急な原因究明を」と話しました。

28人の命が奪われた熱海土石流災害。取り返しのつかない事態の原因となったのは、人工的に造られた「違法な盛り土」でした。

<和田啓記者>
「いま、捜査車両が盛り土を造成した前土地所有者の自宅に入ります」

遺族などは、崩落の起点となった盛り土の前と現在の土地所有者を殺人や業務上過失致死などの疑いで刑事告訴し、警察が捜査を続けています。警察は2022年11月、熱海市役所や静岡県庁に家宅捜索も行い、関係書類を押収したほか、関係者への事情聴取も実施しています。

崩落の起点にあった盛り土の造成は、不動産会社「新幹線ビルディング」の天野二三男代表が別荘地を造成する目的で2007年に申請。その後、許可された高さ15メートルを大幅に超える盛り土を造成し、十分な安全対策も講じられないまま、約50メートルにまで積み上げられました。

盛り土のあった土地は、2011年に現在の所有者に売却された後も安全対策は不十分なまま放置され、2021年7月の土石流災害に至りました。

土石流で母・陽子さんを亡くした瀬下雄史さん。母はなぜ、亡くなったのか。この2年でその答えが出ることはありませんでした。

<被害者の会 瀬下雄史代表>
「いままで誰一人としてこの災害に対する責任や謝罪をしてこない中で、それぞれがそれぞれの『責任がなかった』というような逃げ口上に始終している」

天野代表に3日、土石流災害の責任の所在について尋ねると。

<新幹線ビルディング 天野二三男代表>
「責任論ということになれば、本来私自身が責任の所在とかいうことは、話をするべきことではないと思いますね。いわゆるその真なる原因究明をしていただいて、それによって判断を委ねていかなければならないと考えてますね」

盛り土の造成については、「許可を取っただけで別の業者に土地を貸しただけ」と自身の責任を否定しました。

崩落の起点となった逢初川の源頭部には崩れ残った盛り土約2万立方メートルがありましたが、県が天野代表に命じた土砂の撤去は行われず、県の行政代執行によって撤去作業が進められてきました。行政代執行にかかった総事業費は約11億円にも上ります、。県は費用を天野代表に請求していく方針ですが…。

<新幹線ビルディング 天野二三男代表>
「もちろん、私は払うつもりは全くありません。それは時系列の中から、いわゆる法律的根拠、いわゆる論理からいっても払う必要がないというのは、そんな難しい問題ではないと私は考えています」

警察の捜査をめぐって、ある捜査関係者は「盛り土の造成や崩落まで放置された経緯について調べる内容が多岐にわたるため、捜査に相当な時間がかかる」と話しています。