働き方が多様化する中、コロナ禍をきっかけにテレワークがより身近なものになりました。静岡県内では使われなくなった建物や既存の施設を、テレワークを行う拠点に変える取り組みが活発化しています。
焼津漁港(静岡県焼津市)のそばにある昭和時代の建物。ここは漁師たちが網などの道具をしまうために使っていた「漁具倉庫」です。この場所がいま、多くの人が集まる場所に生まれ変わろうとしています。
<打ち合わせをする会社員>
「あすは会議は何時からでしたっけ?」
「あすは全体は11時」
建物の中で行われていたのはビジネスマンの打ち合わせです。かつて市場や漁協があった焼津漁港の内港。ここに2023年5月、テレワークの拠点施設「焼津PORTERS」がプレオープンしました。
<焼津市経済部 角谷佳晃次長>
「焼津漁港の機能が新港に移り、その結果この施設は放置されていた。新たな地域のにぎわい施設として活用しようとリノベーションした」
20年以上放置されていた漁具倉庫は、ビジネスやイベントなどに利用できる複合施設になりました。
JR焼津駅や東名焼津インターからほど近い「焼津PORTERS」。建物の中は梁や柱など倉庫の雰囲気を生かしつつ、Wi-Fiや空調など快適に仕事ができる環境を整えました。現在、6社がサテライトオフィスとして入居しているほか、複数の会議室は予約制で誰でも利用することができます。
<スマートホテルソリューションズ 高谷正道さん>
「施設としてはコ・ワークスペースですが、それにとらわれず仕事終わりにフラっと遊びに来る、誰かに会いに来るとか、コミュニケーションを大事にする場所にしたい。異業種のコラボレーションだったり、世代がバラバラのコラボレーションだったり。新しいものを生み出していく場になればと思っています」
川根本町の長島ダムです。
<篠原大和記者>
「川根本町ではダムを目の前にテレワークができるスペースが整備されています」
ダムの資料などを展示する「長島ダムふれあい館」です。この施設の一角に22年、ダムを眺めながら仕事ができる「ダム際ワーキングスポット」が整備されました。
<個人事業主(東京)>
「めちゃくちゃ仕事しやすい。会社と全く違う環境。コンピューターを打っていて目を上げると緑がある。これだけでリフレッシュ感が半端ないですね」
<中小企業診断士(東京)>
「凝り固まった脳が柔らかくなってくる。新しいアイデアも生まれてきます」
仕事に疲れたら自然の中で散歩を楽しみ、水しぶきを浴びてリフレッシュ。山奥にあるダムのそばでしか楽しめない非日常のぜいたくな時間です。
<あまねキャリア 沢渡あまね代表>
「ここは僕の中では六本木ヒルズの38階ですよ」
ダム際ワーキングを広める組織改革の専門家、沢渡あまねさんです。沢渡さんは国土交通省、川根本町と協力して、長島ダムふれあい館に全国初のワーキングスポットを立ち上げました。
<あまねキャリア 沢渡あまね代表>
「心をオープンにすることができ日頃とは違う対話や発想が生まれるというメリットを皆さんおっしゃいます。県内をはじめ中山間地のダムがあるところに人が集まって事が起こる。そんな景色が広がれば地域活性になり、参加する企業や組織の課題解決にもつながると思います」
夢の吊り橋や大自然の中を走る「きかんしゃトビー号」など多くの観光資源がある川根本町。一方で「働く場所」としてはこれまで注目されていませんでした。少ない投資で整備ができるコストパフォーマンスの高さもメリットのひとつです。
<川根本町 秋元伸哉副町長>
「人を呼び込むために新しいハコモノを作ることも魅力的なことだと思いますが、財政力がそれほど豊かな町ではないので既存の施設を活用していくことは重要な取り組み。都市部から地方に人が流れてくるきっかけのひとつになればと思っています」
需要が高まるテレワークを行う場所。いまあるものを上手に生かして新しい価値を生み出す、SDGsの理念に沿った施設が今後ますます増えていきそうです。