終戦から80年。戦争の記憶をつなぐ機会が失われつつあります。静岡県牧之原市では子どもたちに平和の尊さをつなぐ集いが最終回を迎えました。

10月11日、「牧之原コミュニティセンター」で開かれた「平和の鐘を鳴らす集い」。

戦時中の牧之原市で時を刻んでいた鐘を鳴らし平和を誓います。2008年から続いてきた集いはこの日、最終回を迎えましたが、子どもたちの姿はありませんでした。

この地区にはかつて特攻の訓練などを行う大井海軍航空隊がありました。集いの会場であるこのコミュニティセンターも飛行場の跡地に建っています。

<大崎信博さん(75)>
「ここが当時の隊門の跡になります。大井航空隊の入り口ですね。これが当時のままの姿です」

「平和の鐘を鳴らす集い」を企画し続けてきた大崎信博さん(75)です。大崎さんは、毎年、終戦の日に訓練場にいた隊員を招いて当時の体験を地域の子どもたちに伝え、一緒に鐘を鳴らしてきました。

しかし、語り部の隊員たちが亡くなってしまったほか、新型コロナの影響もあって集いは2018年から開けなくなっていました。

<大崎さん>
「次の世代の人たちが見たいと思うこともあるかもしれないから保存していかないと」

大崎さんは記憶をつなぐための資料をまとめながら集いの再開に向けて奔走しましたが、語り部は見つからず、子どもも集まらなかったそうです。

自分自身も75歳。役目の限界を感じ、戦後80年の節目を集いの最終回とすると苦渋の決断をしました。

<大崎さん>
「この鐘の意味、ここにいた人たちがどういう思いで訓練していたか。いまの時代とはかけ離れているけど伝えていくべきだとは思っていますね」

個人の想いだけでは戦争の記憶を未来につないでいくことが難しくなっています。時の重みを感じさせる平和の鐘は警鐘も鳴らしています。