過去最長となる7年9か月にわたり続いてきた「黒潮の大蛇行」について気象庁は終息したと発表しました。海産物の不漁を招いたとされる大蛇行の終息ですが、その後遺症も懸念され、まだ油断できる状況ではないようです。

<イセエビ漁師 谷聡将さん>
「一応、これがエビ網で使っている網ですね」

静岡県南伊豆町の海沿いの倉庫にきれいに並べられていたのはイセエビをとるための網。もうすぐ活躍の時間が訪れます。毎年9月中旬に解禁される南伊豆町のイセエビ漁ですが、近年は苦戦が続いています。原因とされてきたのが黒潮の大蛇行です。

通常、本州の南側沿いを流れる黒潮が冷たい渦の発生によってコースが大きく変わることを黒潮大蛇行と呼びます。この大蛇行に伴い南伊豆沖ではイセエビが減ったとみられているのです。

海の環境を変えた黒潮の大蛇行は2017年8月から続いていましたが、先週、気象庁は2025年4月に終息したと正式に発表しました。

<イセエビ漁師 谷さん>
「海藻が増えて、それをエサにする貝やエビが増えて、海が豊かになって10年くらい前の海に戻ってくれればいいなと」

黒潮の大蛇行は鮮魚店にとっても経営環境を一変させるほどの影響があったそうです。静岡市葵区の老舗鮮魚店「鮮魚日の出」では黒潮大蛇行が始まった7年ほど前から入る魚の種類も量も大きく変化したと話します。

<鮮魚日の出 川瀬真吾代表>
「キンメダイもここ7~8年、すごく減少している。物はあっても値段が上がっているしいいキンメダイが少なくなってきた」

一方で、不漁が続いていたあの魚には今シーズン、うれしい変化の兆しが見えています。

<川瀬代表>
「今年はサンマがめちゃめちゃデカいです。1本200グラムのでかいサンマ、このサンマはここ4~5年見なかった」

7年9か月続いた黒潮の大蛇行。激変した海の環境はすぐに戻るわけではなく、後遺症がしばらく続くのではと専門家は指摘します。

<海洋研究開発機構 美山透主任研究員>
「黒潮大蛇行が収まったとしても、この8年間に地球温暖化は進行しているわけで全く元通りではなくて、ある程度水温が上昇した状態」

海水温の上昇と黒潮の大蛇行でダメージを受けた海の生物などはすぐに復活できるわけではなく、漁場や漁獲量が元に戻るかは未知数です。さらに大蛇行はまたすぐに復活する可能性が残されているそうです。

<美山主任研究員>
「今回は黒潮大蛇行の渦がはじきとばされるかたちで黒潮大蛇行が終わったんですが、今その渦がもう1回、黒潮にくっついて和歌山県あたりに戻ってきている状況なのでこれが成長してしまうと、また黒潮大蛇行が起こることになります。この2か月くらいが注目」