メタバース開発で「子どもの心理的ケアができたら」

今年6月に開発したのは、長期の入院を余儀なくされる・希少がん患者や、闘病を乗り越え社会復帰を果たした「がんサバイバー」向けのメタバース。全国各地の病院にいる患者同士を繋げようという日本初の試みです。

(岡山大学学術研究院医歯薬学域 長谷井嬢准教授)
「コロナになって、家族の人の面会が自由でなくなったりして、やっぱり自分の思いとかを打ち明けたり、お話直接したりっていう機会がかなり減ってしまった」

「他の病院にいる子どもたち同士を繋げてお話するっていう機会を設けると、そういう心理的なところのケアがもっとできるんじゃないかというので、作ろうというなりました」

【画像⑨】「患者用メタバース」開発のきっかけは

小さな子どもや思春期の若者、30代の人たちの間で多く発症する「希少がん」は、約200種類の悪性腫瘍が分類され、個々の希少がんはいずれも全体の1%に満たない「まれ」な腫瘍です。

国立がん研究センターによりますと、すべての希少がんを合わせると、日本ではがん患者の15%程度、年間約10万人が診断されるという病気なのです。

一方、同じ世代・同じ症例の患者が病院にいることはほとんどなく、ひとりで悩みなどを抱えこんでしまうことが多いといいます。

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岡山市で暮らす田邊凌さん(22)もそのひとりでした。

(元希少がん患者 田邊凌さん)
「最初は足が痛くて『成長痛かな』って思ったんですけど。本当にある日、耐えられなくなって。病院を受診したところ「悪性骨肉腫」という事が分かりました」

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中学3年生の「希少がん患者」が抱えた孤独

中学3年生だった2016年11月、思春期の10代に発症することが多い希少がんのひとつ「悪性骨肉腫」と診断。吐き気や倦怠感・頭髪が抜けるなど、抗がん剤治療の副作用と闘い続け、約1年半後の2017年3月に社会復帰しました。

ただ希少がんを患う同年代の患者は身近におらず、闘病中は孤独を強く感じていたといいます。

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(元希少がん患者 田邊凌さん)
「病室でひとりになった時に『この先どうなるんだろう』っていう不安はありました。同年代の人が少なかったので、当時思春期だったんですけど、同じくらいの年齢の人にしか言えないような事っていうのは、誰にも相談できなかった」

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